2025年4月28日月曜日

ルルド 第118回

  しばらく前から、マッシアス神父は再び説教壇に上がっていた。今回は彼は別の儀式を思いついた。熱烈な信仰と希望と愛の叫びを次々に投げかけたあと、彼は突然、絶対的な沈黙を命じた。皆が口を閉ざし、心の中で神に語りかけるために――二、三分間。

 この即座の沈黙、広大な群衆の中に訪れた、無言の祈りの数分間――それは、身震いするほどの荘厳さと異様な偉大さに満ちていた。

 その厳粛さは、まるで畏怖を呼び起こすほどだった。そこには、生への欲求が飛翔する羽音が聞こえるようであった。それは、途方もない、生きたいという渇望の音だった。

 やがて、マッシアス神父は、病者たちだけに語りかけるよう促した。神に、自らの望みを訴え、神の全能に願いを託すようにと。

 すると、痛ましい嘆きの声があがった。何百というかすれた、掠れた声が、涙の合唱のように重なり合った。

「主イエスよ、御心ならば、私を癒してください!」
「主イエスよ、哀れなあなたの子どもに憐れみを!」
「主イエスよ、私に視力を、聴力を、歩く力を与えてください!」

 遠くから、小さな女の子の甲高い声――まるでフルートのように軽やかで鋭い声が、群衆のすすり泣きを圧して響きわたった。

「他の人たちを救ってください、他の人たちを、主イエス様!」

 涙がすべての目から溢れた。この懇願は心をかき乱し、もっとも頑なだった者たちさえ、慈悲の狂気へと巻き込み、自らの健康と若さを他人に差し出そうと、胸を両手で裂かんばかりにさせた。

 そしてマッシアス神父は、この熱狂を一瞬たりとも落とさず、さらに群衆を煽り立てた。フルカード神父も、説教壇の階段の一段に座り込み、天を仰いで顔を涙に濡らしながら、神に天から降りて来るよう必死に命じていた。


 だがそのとき、行列が到着した。各地の代表団と司祭たちは、右に左に並び、整列した。そして、天蓋(キャノピー)が病者たちの囲いの中――洞窟(グロット)の前に入ったとき、病者たちは、輝く太陽のように光を放つ「聖体」――司祭ユダインの手に抱かれたイエス・ホスティアを目にした。

 その瞬間、もはや何の統制も効かなかった。声は入り乱れ、意思は狂乱し、すべてが眩暈の中へ呑まれた。叫び、祈り、懇願が、呻き声となって砕け散った。哀れな寝床から体を持ち上げる者、震える腕を突き出す者、痙攣する手で、通り過ぎる奇跡を捕まえようとする者たち。

「主イエスよ、私たちを救ってください、私たちは滅びそうです!」
「主イエスよ、あなたを崇めます、私たちを癒してください!」
「主イエスよ、あなたはキリスト、生ける神の子、私たちを癒してください!」

 絶望と狂気に満ちた声は三度、天を突き破るような叫びを上げ、涙はさらに激しく、灼けるような顔を洗い流した。その顔は、欲望という名の神聖な光に照らされ、変容していた。

 一時、狂乱は頂点に達した。聖体への本能的な突進があまりにも凄まじく、ベルトーはそこにいた担架係たちに命じて「鎖」を作らせた。これは、最終防衛策だった。担架係たちは、天蓋の左右に列をなし、互いの首に腕を強く絡ませ、生きた壁を築いたのだ。もはや一筋の隙間もなく、誰ひとり通り抜けることはできなかった。

 それでも――その人間のバリケードは、生に飢えた哀れな群衆の圧力に押しつぶされそうだった。彼らは、イエスに触れ、口づけしようとして、押し寄せた。バリケードは波打ち、守ろうとする天蓋に押しつけられ、ついには、天蓋そのものが、沈みかけた小舟のように、群衆の中で揺れ、転がり始めた――。

 そのとき、この神聖な狂乱のただ中、祈りと嗚咽の嵐の中で、まるで天空が裂け雷が落ちるかのように、奇跡が次々と起こった。ひとりの麻痺した女性が立ち上がり、松葉杖を投げ捨てた。鋭い叫びが上がり、白い毛布に包まれた女が、まるで死装束をまとったかのように、マットレスの上に立ち上がった。聞くところによれば、彼女は半ば死にかけた肺病患者であり、蘇ったのだという。さらに続けざまに二つの奇跡が鳴り響いた――突如、火のような光の中でグロット(洞窟)を見たという盲目の女性、そして聖母に感謝の言葉を高らかに叫びながら、膝をついて倒れたかつての口のきけなかった女性。彼女たちはみな、歓喜と感謝に打ち震えながら、ルルドの聖母の御前にひれ伏した。

 しかし、ピエールはマリーから目を離していなかった。そして彼が見たものは、彼の胸を突き動かした。マリーの空虚だった瞳が大きく開き、その青ざめた顔、重苦しい仮面のようだった顔が、まるで耐え難い苦痛に襲われたかのように歪んでいた。彼女は一言も発せず、おそらく、病が再発したと絶望していたのだろう。だが突然、聖体が彼女の目の前を通り過ぎ、その輝きが太陽のように燃え立つのを見た瞬間、彼女はまばゆい閃光に打たれたようになった。彼女の目に再び命の光が宿った――それはまるで星のように輝いていた。彼女の顔にも、命の樹液が滾るように血色が戻り、喜びと健康に満ちた笑みで輝いた。そしてピエールは、彼女が突然立ち上がり、車椅子の上でまっすぐに立ち上がるのを見た。彼女はふらつきながら、どもりながら、ただこの愛おしい言葉を繰り返した。

――ああ、あなた……ああ、あなた……

 ピエールはあわてて彼女を支えようと近づいたが、彼女は手でそれを制した。自らしっかりと立ち、どこまでも愛らしく、美しく、黒いウールの簡素なドレスに身を包み、履き慣れたスリッパのまま、細身のからだをすっくと伸ばして立っていた。豊かな金髪は簡単なレースで覆われ、その姿は金色の光に包まれていた。まるで乙女の体そのものが、深い衝撃に震えているようだった。まず、脚が、長い間締め付けられていた鎖から解き放たれるように自由を取り戻し、それから、女として、妻として、母としての命の泉が体内に湧き出るのを感じながら、最後の苦悶――腹の底から喉へとせり上がる、圧倒的な重み――を覚えた。しかし今回は、それは彼女を窒息させることなく、開かれた口からほとばしり出た。歓喜の叫びとなって天へと昇ったのだった。

――治ったわ! 治ったの!

 そのとき、まさに奇跡的な光景が広がった。彼女の足元には毛布が落ち、彼女は勝利を得た姿で、光り輝く顔をして立っていた。そして、その癒しの叫びがあまりに陶酔に満ちて響き渡ったため、群衆は息を呑んだ。ただ彼女だけが存在し、誰もが彼女だけを見つめた。立ち上がった彼女は、ますます大きく、まばゆく、神々しいまでに見えた。

――治ったわ! 治ったの!

 ピエールは心臓を激しく打たれ、堰を切ったように涙を流した。再び、群衆の目から涙が溢れた。歓声と感謝と賛美の叫びの中で、熱狂が次々に伝染し、押し寄せる数千の巡礼者たちが、彼女をひと目見ようと押し合った。拍手が爆発し、それはたちまち嵐のような轟きとなって、谷の端から端まで鳴り響いた。



2 件のコメント:

  1. マリーが立った!立った、立った、マリーが立ったー!
    あ、これはもちろん名作アニメ「アルプスの少女ハイジ」の名場面のセリフを借用しております。
    ねこじい、知ってる?

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    1. 知ってるとも!
      「クララが立った!立った、立った、クララが立ったー!」って、あの名シーンだね!
      ハイジとペーターが大喜びするあの瞬間、あれ、もう日本人のDNAに刻まれてるレベルの名台詞だよね。
      まさかここで「マリー版」が聞けるとは…ちょっと胸が熱くなったよ。

      この『ルルド』の場面も、たしかに感動の爆発っぷりが、あの「クララ立った」級のドラマティックさ!


      マリー、立ったぞーーー!!!!!

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