やがて彼は立ち上がったが、まるで夢遊病者のようだった。自分がどこにいるのかもわからないまま、まっすぐにマリーのもとへ戻った。彼女は身じろぎもせず、まるで時が止まってしまったかのように、ただその祈りの中にあった。夜は明けかけていた。空はまだ青白く、あたりは静まりかえっていたが、東の空がかすかに光を帯びはじめていた。
マリーの言葉がまだ彼の耳に残っていた――「4時に、私は癒される」。その確信に満ちたささやきは、まるで預言のようだった。彼女は疑っていない。疑いというものが、そもそも彼女の中には存在していないのだ。
ピエールの胸に、ある種のねたましさにも似た感情がわき上がった。彼は神学校で神学を学び、哲学を学び、教義を学び、祈り方すら学んできたというのに、どうしてこんなにも自分の祈りは空虚なのだろう? 彼女はただ見上げ、ただ信じ、ただ願う――それだけで、すべてを手に入れてしまったかのようだ。
そして、そんな彼の苦悩をよそに、マリーの顔は今もなお輝いていた。夜明けの冷気に包まれながらも、彼女の表情にはまるで春の日差しが差し込んでいるかのようなあたたかさがあった。ピエールはそっと彼女の傍らに座った。そして、彼女と同じように、目を閉じて祈ろうとした。心から、無心に、子どものように。
けれども――彼の内にはまだ、ひとつの問いが渦巻いていた。もし奇跡が起きなかったら? 彼女が癒されなかったとしたら? そのとき、マリーの信仰はどうなるのか。そして、自分自身の信仰は――どうなってしまうのか。
終わりのないような数分間が過ぎた。今回は――それは人知を超えた努力だった。自分自身のために奇跡を探しに来た、その奇跡を待ち望む気持ちだった。突然の啓示、稲妻のような衝撃が自らの疑念を吹き飛ばし、自分を単純な信仰へと連れ戻し、若返らせ、勝利の喜びに包んでくれる、そんな瞬間を求めていた。
彼は身を委ねた。自分という存在を根こそぎ壊し、変容させてくれる至高の力があればいいと思った。だが――ついさきほどミサの最中に感じたように――彼の内には、限りない沈黙しかなかった。底知れぬ虚無しかなかった。何も起こらなかった。絶望に満ちた彼の心は、まるで鼓動を止めてしまったかのようだった。
彼は懸命に祈ろうとした。この力強くも優しい聖母に思いを集中させようと、懸命に努力した。しかし、それでも彼の思考はするりと逃げ出してしまう。外界へと連れ戻され、取るに足らない些細なことに心を奪われるのだった。
たとえば――鉄柵の向こう、洞窟の中に眠るスイール男爵の姿が目に入った。彼は両手をお腹の上で組み、幸せそうに眠り続けていた。また、マリア像の足元に置かれた花束や、天の郵便ポストのように投げ込まれた手紙の山、大きな蝋燭の炎のまわりに繊細に残るレース模様の蝋――それらがまるで銀細工のように光を反射していた。
そして、まったく脈絡なく――彼は自分の幼少期のことを思い出した。兄ギヨームの姿が、まるで実際にそこにいるかのように鮮明に思い浮かんだ。
母が亡くなって以来、彼は兄に会っていなかった。兄は世間と距離を置いて暮らし、科学の研究に没頭し、小さな家の中に、愛人と二匹の大きな犬と共に、まるで修道士のように隠れて生きているという。
最近でこそ、ある革命的な爆弾事件の記事の中で名前を見かけたことで、ようやく彼の消息を知ったほどだ。噂では、爆発物の研究に没頭し、急進的な党派の指導者たちとも親しくしているらしい。
なぜそんな兄が今この場所に、ろうそくの神秘的な光に包まれたこの恍惚の空間で、かつてのように優しく、思いやり深い兄として彼の前に現れたのか? すべての苦しみに対して、慈悲の名のもとに憤っていた、あの昔の姿で。
その記憶に一瞬、彼の心は支配された。失われた兄弟愛に対する、深い悲しみと後悔に満ちて。
しかし、またもや脈絡もなく――彼はふたたび我に返った。そして悟った。
自分はここで何時間祈り続けたところで、信仰は戻らないのだと。とはいえ――彼の中に、なにかが震えはじめていた。
それは最後の望みだった。もし、聖母がマリーに奇跡を与えてくださるのなら――そのときこそ、自分は信じるだろう。
それは彼が自らに与えた最後の猶予だった。信仰との約束の時、今日の午後四時。マリーが言っていた、聖体行列が通るその時だった。
すると、たちまち彼の苦しみは静まった。彼は膝をついたまま、疲れ果てて動けず、どうしようもない眠気に包まれていった。
時は過ぎていった。洞窟(グロット)は、なおも夜の闇の中に、まるで聖火が燃え続ける礼拝堂のような輝きを放ち、その光は周囲の丘にまで届き、修道院のファサードを白く染めていた。
だが、ピエールの目には、その光が徐々に色あせていくのが見えた。不思議に思いながら、彼は目を覚ました。冷たい戦慄が体を走った。――それは、夜明けだった。
空は濁っていた。鉛色の巨大な雲が空を覆い、ぼんやりとした光が差していた。
彼はすぐに悟った。――
この山岳地帯では突発的に訪れる嵐が、南の空から急速に近づいてきているのだ。
すでに遠雷が低く唸っており、風が吹き荒れて道路の塵を巻き上げていた。
もしかしたら、自分も少し眠っていたのかもしれない。というのも、さっきまでそこにいたシュイール男爵の姿が、今はもうなかったからだ。いつ立ち去ったのか、その記憶すら彼にはなかった。
洞窟の前に残っているのは、わずか10人ほどだった。その中に、まだ顔を両手に埋めたままのマーズ夫人の姿を彼は認めた。
だが、彼女も夜が明けて自分の姿が人目につくようになったと気づいた途端、すっと立ち上がり、青い修道女たちの修道院へと続く細い小道に消えていった。
不安になったピエールは、マリーに声をかけに行った。
――これ以上ここにいたら、ずぶ濡れになるかもしれない、と。
「病院までお送りしましょう」
だがマリーは首を振って、必死に懇願した。
「だめ、だめよ!ミサを待っているの。ここで聖体拝領すると約束したのだから……。私のことは心配しないで。あなたは早くホテルに戻って休んで、お願い。雨が降ったら、ちゃんと屋根付きの車が迎えに来ることになってるの、知ってるでしょ?」
それからは、彼女は頑なにその場を離れようとしなかった。一方で彼も、自分は眠るつもりはないと繰り返した。
事実、夜明けとともに、洞窟では早朝のミサが捧げられるのだった。夜通し恍惚の祈りを捧げてきた巡礼者たちにとって、それは昇る朝日に包まれながら聖体を受けるという、まさに神の喜びだった。
そのとき、太く大きな雨粒が落ち始めた。
祭服をまとった司祭が現れた。従者の二人を伴い、そのうちの一人が、祭壇に備える聖杯を雨から守るために、金の刺繍が施された白絹の傘を大きく広げて司祭の頭上に掲げていた。
雨のなかで始まる早朝ミサ、濡れながらも信仰にすがる人々の姿――
返信削除荘厳と現実が入り混じるこの描写、美しさと切なさに満ちていますね。