馬車の中には、サントボーノが静かに待っていた。彼は再び折りたたみ椅子の自分の席に腰を下ろし、背を御者の座席の裏にしっかりと預け、長い脚を自分の下に引き寄せていた。そしてまた膝の上に、あの小さなイチジクの籠をのせていた。なんとも愛らしく整えられたその籠を、彼はごつごつした節くれの手で包み込むように守っていた。まるで、わずかな車輪の揺れで傷ついてしまうような、珍しくも壊れやすいものを扱うように。彼の黒衣は、車内に大きな暗い影を落としていた。粗野な土地に生き続けてきた農民の、厚ぼったく土気色を帯びた顔。そのわずかな神学の勉強では洗練しきれぬ顔の中で、ただ眼だけが生きていた。黒く燃えさかるような炎――情熱に焼かれる瞳である。
サントボーノがそんなふうに堂々と腰を据え、あまりにも落ち着き払っているのを見て、プラダは一瞬、身震いした。それから、ヴィクトリアが再び動き出し、まっすぐで果てのない道を走りはじめると、プラダは言った。
「さて、神父、これで一杯やったからには、悪い空気にも負けませんな。法王陛下も我々の真似をなされば、あの腹痛もきっと治りますよ。」
しかし、サントボーノはその言葉にただ低い唸りをもらしただけだった。もう口を開こうとはせず、ゆっくりと落ちてゆく夜に包まれるように、完全な沈黙の中に閉じこもった。プラダもまた黙り込んだ。彼に視線を向けたまま、この男はいったい何をしようとしているのかと考えていた。
道は曲がり、そしてまた延々と続いた。終わりのない舗装道――白い石畳が、一本の線を描くように、無限に流れていく。その白さが次第に光を帯び、まるで雪の帯のように見えた。両側に広がる広大なカンパーニャは、しだいに淡い影の中に沈んでいった。ゆるやかな起伏の窪地には闇がたまり、紫がかった潮のようにそれが広がって、短い草を覆い尽くし、果てしなく平原を押し広げていく――まるで色あせた海のように。すべてが溶け合い、ただ曖昧で中性的なうねりだけが、地平線の端から端まで続いていた。荒野はさらに静まり返り、最後の一台ののんびりした荷馬車が通り過ぎ、遠くで鳴る鈴の音がかすかに消えた。もう通行人も、獣もいない。色と音が死に、すべての生命が眠りにつく――虚無の静かな平安の中へ。右手には、ところどころに水道橋の断片が現れた。まるで時の大鎌に切断された巨大なムカデの節のように。
やがて左手には、黒々とした廃墟の塔が立ち、空を突く黒い杭のように高くそびえていた。そしてまた別の水道橋のアーチが道を横切り、夕陽の下で、誇張されたような大きさを帯びていた。ああ、なんという時――ローマのカンパーニャの黄昏! すべてがその中に溶け合い、すべてがその中に要約される時。裸の無限、単純さの中の無限――。そこには何もない。丸く平らな地平線の線しかなく、ただ一つの廃墟の影が孤立して立つだけ。だが、この「何もない」ことこそが、荘厳で、至高の威厳を放っていた。
太陽は西の海の方へ沈みつつあった。透きとおる空の中で、まるで真紅の火の球のように、まぶしいほどの赤で沈んでいく。ゆっくりと地平線の彼方へ沈みこむと、残る雲はただ幾筋かの火の煙だけ――遠い海がこの王者の訪れの炎で煮え立っているかのようであった。やがて太陽が姿を消すと、空のその一角は血の池のように染まり、カンパーニャは灰色に変わっていった。色を失った平原の果てには、紫の湖が広がり、その炎が水道橋の黒いアーチの向こうで次第に消えていった。反対側では、ばら色を残した他のアーチが、錫色の空の上にくっきりと浮かび上がっていた。そして火のような雲もやがて消え、夕暮れは、荒々しくも深い憂愁のうちに静かに息絶えた。青灰色の穏やかな天に、星々が一つ、また一つと灯り始めた。遠く、地平線のかなたにあるローマの灯りが、灯台のようにちらちらと瞬いていた。
沈思の沈黙の中、二人の同行者に包まれながら、プラダはその無限の夕べの哀しみに浸され、言葉にできぬ不安に襲われていた。彼はなおもサントボーノから目を離さず、その顔が夜に沈んでいくのを見つめていた。あの大きな体を馬車の揺れに任せ、あまりにも静かにしている――。彼の心には、こう繰り返されていた。
「人を毒殺するのを、このまま見過ごすわけにはいかない。」
あのイチジクは、間違いなくボッカネーラ枢機卿に届けられるはずのものだ。プラダにとって、枢機卿が一人増えようが減ろうが、どうでもよかった。未来の歴史的役割など、予測のしようもない。だが、彼の苛烈な征服者の哲学――「生存競争の中で、運命に任せるのが最善だ」という考え方――からすれば、運命のなすがままに任せるのも悪くはなかった。それに、「司祭が司祭を食う」などということは、無神論者の彼にとっては愉快なことでもあった。だが同時に、彼はこの忌まわしい事件に介入することの危険も感じていた。教会という闇の世界の底には、底知れぬ陰謀がうごめいているのだ。しかし、ボッカネーラ枢機卿の館には枢機卿ひとりではない。もしこのイチジクが宛先を間違えたら? 本来狙われていない誰かのもとへ届いてしまったら? 偶然という恐ろしい不条理――その考えが今や彼を苛んでいた。
そして、考えまいとする彼の脳裏に、ベネデッタとダリオの顔が浮かび上がった。どんなに振り払おうとしても、二人の面影は消えず、彼の前に立ちはだかった。
もしも、ベネデッタが――もしも、ダリオが――この果実を食べたら?
ベネデッタのほうはすぐに除外された。彼女は叔母と別の食卓を囲んでおり、両家の厨房に関わりはなかったからだ。だが、ダリオは? 彼は毎日、叔父とともに昼食をとっているではないか。
その瞬間、プラダの脳裏に恐ろしい光景がよぎった。ダリオがけいれんを起こし、枢機卿の腕の中に倒れこむ――。かつてのモンシニョール・ガッロのように、顔は灰色に変わり、目は落ち窪み、そして二時間のうちに息絶える……。
「いや、いかん! そんなのはあまりにおぞましい。そんな冒涜を許すわけにはいかない。」
そう思った瞬間、彼の心は決まった。夜の闇がすっかり降りるまで待とう。そして、ただ黙って、神父の膝の上の籠を取って、影の中のどこかへ放り投げてしまえばいい。一言も言わずに――。神父には察しがつくだろう。もう一人の若い司祭は、おそらく何が起こったか気づきもしない。そもそも、説明する必要などないのだ。
そして、彼はほっとした。ちょうどフルバ門をくぐるあたりで籠を放り投げればいい――ローマに着く数キロ手前、あの門の暗がりの中でなら、誰にも見えはしない。
「ずいぶん遅くなりましたね。ローマに着くのは6時近くになりそうだ。」
プラダは声を出して言い、ピエールのほうへ向き直った。
「でも、着いたら着替える時間くらいはありますよ。そしてお友達のところへ行ける。」
そう言うと、返事を待たずにサントボーノに声をかけた。
「神父さんのイチジク、ずいぶん遅いお届けになりますな。」
「おお、」と神父は言った。「枢下は8時までお客をお通しになりますから。それに、このイチジクは今晩のためじゃありません。夜にイチジクは食べませんからね。明日の朝に召し上がるはずです。」
そして再び口を閉ざし、沈黙に戻った。
「明日の朝に、そうですな、きっとそうでしょう。」
プラダが繰り返した。
「枢機卿さまは、誰にも邪魔されず、心ゆくまで味わえるでしょう。」
そのときピエールが、何気なく、知っていたニュースを口にした。
「きっとお一人で召し上がるでしょうね。甥のダリオ公子は、今日ナポリへ出発されたはずです。1か月以上も床につかれていましたから、快復のための小旅行だそうです。」
だが彼はふと我に返り、誰に向かってその話をしたのかを思い出した。そして慌てて口をつぐんだ。しかし、伯爵はその動揺を見逃さなかった。
「いやいや、構いませんよ、フロマンさん。もう昔のことです……。それで、その若者は出かけたのですか?」
「ええ、たぶん出発されたと思います。ただ、もし予定を延ばしていたら別ですが。もう宮殿にはおられないと思います。」
その後しばらくの間、聞こえるのは車輪の絶え間ない響きだけだった。そしてプラダは再び沈黙した。不安がよみがえり、確信のもてない苦悩に引き戻された。
――もしダリオが本当に出発していたなら、自分はいったい何に首を突っ込もうとしているのか?
考えれば考えるほど、頭が痛んだ。やがて彼は、思わず声に出して考えていた。
「……まあ、出発したとすれば、それは礼儀のためでしょう。今夜はボンジョヴァンニ家の夜会がありますからね。私に対して伯爵夫人が起こした訴訟――その件について、今朝、信議会が最終審理を行ったのです。ええ、もうすぐ分かりますよ。法王陛下が、私たちの結婚の無効を署名されるかどうかを。」
声がわずかにかすれていた。男としての誇りに刻まれた古傷が、再び裂け、血を流していたのだ。自分の妻でありながら、他の男に身を許したあの女――その侮辱が、いつまでも彼の胸を焼いていた。愛人のリスベットが自分の子を産んでくれても、あの「不能」という屈辱の烙印、男としての名誉を傷つけた侮りは、絶えず蘇っては、彼の心を盲目的な怒りで膨らませた。
突然、全身に激しい戦慄が走った。まるで冷たい風が身体を突き抜けたようだった。そして話題をそらすように、彼は急に言った。
「今夜はずいぶん冷えますね……。この時間はローマではあぶないんです。日が落ちる頃は、気をつけないとすぐ熱を出しますよ。――ほら、毛布を膝にかけて、しっかり包まっておきなさい。」
教会内の陰謀にプラダの思惑が加わって、さてさて、どうなるどうなる?
返信削除こういうふうに立場の違う多くの人の意思が錯綜するドラマを描くのがゾラはうまいよね。
まったくそのとおりです。ゾラの筆致の真骨頂は、**「人間の意志と制度の力のせめぎあい」**を群像の中で描くところにありますね。彼の物語は常に「誰が悪いか」ではなく、「どうしてそうならざるを得なかったのか」という因果の網の中で展開します。
削除『ローマ』のこのあたりになると、教会という巨大な機構の中で、プラダのような俗世的な計算も、ピエールのような理想も、そしてサントボーノのような信仰の狂信も、すべてが渦を巻く。
まるでゾラが「教会都市ローマそのもの」を一つの巨大な有機体として描いているようです。
プラダの思惑も、単なる復讐心ではなく、名誉、権力、性、信仰が絡み合った複雑な心理の結果。サントボーノの籠の中のイチジクがその象徴のように、外から見れば甘美で平穏なのに、中に潜んでいるのは毒――という構図、ゾラらしい皮肉ですよね。
このあと、彼の計算と偶然がどう交錯していくか……まさにゾラ流の「運命の実験劇場」です。