ちょうどそのとき、彼らの会話は中断された。スイール男爵が再び彼らの前を通り過ぎたのである。先ほども一度通ったが、そのときは彼らに気づかなかった。あまりに暗がりにいたせいで、彼らの姿は影に溶け込んでいたのだ。しかし今回は、旧知の共和国検事の朗らかな笑い声を耳にし、ようやく気がついた。そしてすぐさま、持ち前の饒舌さを発揮し、立て続けにいくつもの指示を飛ばした。車両の手配や患者たちの輸送について述べ、さらに到着後すぐに巡礼者を洞窟へと案内できないことを嘆いた。到着時刻があまりに早朝すぎるのが理由だった。そこで、彼らを「ノートル=ダム・デ・ドゥルール病院」に収容し、一晩の疲れを癒やすための休息を取らせることになった。
スイール男爵と担架係の責任者であるベルトーが、こうして対応策を協議している間、ジェラール・ド・ペイルロンジュはそばのベンチに腰かけていた神父と握手を交わした。その神父、デゼルモワーズ神父は三十八歳になったばかりだったが、洗練された容姿をした都会派の聖職者だった。髪は丹念に整えられ、かすかに香水の香りをまとっており、女性たちからの人気が絶えなかった。気さくで社交的な彼は、自由な身の神父としてルルドにやって来ていた。同じような立場の聖職者は少なくなく、彼らは信仰の義務よりも個人的な楽しみとしてこの地を訪れていた。デゼルモワーズ神父の美しい瞳の奥には、どこか鋭い光が宿り、偶像崇拝とは一線を画す懐疑的な微笑が浮かんでいた。もちろん、彼は信仰を持ち、教会の立場を尊重していた。しかし、奇跡については教会が公式な見解を示していないこともあり、彼自身も慎重な姿勢を崩していなかった。むしろ、その真偽を冷静に議論する用意があるようだった。
彼はタルブで暮らしていたことがあり、ジェラールとも旧知の仲だった。
「いやあ」彼は言った。「こうして夜中に列車を待つのは、なかなか壮観じゃないか! なんとも言えない雰囲気があるね……。私は、パリにいた頃の懺悔者の一人のご婦人のために来たんだが、どの列車で到着するのか確かなことがわからなくてね。でも、ほら、こうして待っているだけでワクワクするんだよ」
すると、もう一人の神父がベンチに座った。今度は田舎の古参の神父である。デゼルモワーズ神父はその神父とも気さくに語り合い、ルルドの美しい景観や、もうじき太陽が昇れば山々が劇的に姿を現すことについて、興味深げに話していた。
そのとき、突然の騒ぎが起こった。駅長が駆けてきて、大声で指示を叫んでいた。
痛む足を引きずりながらも、フルカード神父がボナミ医師の肩を借りるのをやめ、急ぎ足で近づいた。
「一体、何があったのです?」
駅長は息を弾ませながら答えた。
「ええ、それが……バイヨンヌ発の急行列車が途中で立ち往生してしまいましてね。詳細はまだわかりませんが、気がかりです」
しかしそのとき、けたたましくベルが鳴り響いた。駅員の一人が、ランタンを大きく振りながら闇の中へと駆けていく。そして、遠くで信号機の切り替わる音がした。
駅長は、突然嬉しそうに叫んだ。
「おお! 今度こそ白い列車だ。願わくば、急行が来る前に患者たちを降ろせるといいが……!」
彼は再び駆け出し、姿を消した。ベルトーは担架係の班長であるジェラールを呼び、二人はそれぞれの持ち場へ急いだ。すでにスイール男爵が担架係たちを急き立てていた。担架係たちは四方から集まり、小さな車を線路の間から降車用のホームへと運び始めた。そこは屋根のない、完全な暗闇に包まれた場所だった。やがて、そこにはクッション、マットレス、担架が山と積まれ、列車から降ろされるのを待っていた。その間、フルカード神父、ボナミー医師、司祭たち、貴族の紳士たち、竜騎兵将校たちもホームへ移動し、病人たちの降車を見守ろうとしていた。
まだ遠く、黒い田園の彼方に、機関車のランタンの光だけが見えた。それは赤い星のように次第に大きくなっていった。鋭い汽笛が夜を引き裂いた。それが止むと、蒸気の吐息と車輪の鈍い唸りだけが響き、やがて速度がゆっくりと落ちていった。すると突然、はっきりと、列車全体が歌う聖歌の旋律が聞こえた。ベルナデットの哀歌と、それに続く「アヴェ・マリア」の執拗な繰り返し。こうして、苦しみと信仰の列車、呻きながらも歌う列車がルルドへと到着し、ついに停車した。
すぐさま扉が開け放たれた。健康な巡礼者や歩ける病人たちは次々と降り立ち、ホームを埋め尽くした。わずかに灯るガス灯の光は、ぼんやりとしか群衆を照らさなかった。皆、くすんだ色の服を着ており、荷物で手いっぱいだった。包みや籠、トランク、木箱を抱え、混雑の中で肘を突き合わせながら、出口を探して右往左往していた。その中からは驚きの声、はぐれた家族が互いを呼び合う叫び、待ち受けていた親族や友人との抱擁があちこちで沸き起こった。一人の女が満ち足りた表情で「よく眠れたわ」とつぶやいた。ある神父は、松葉杖の婦人に「幸運を祈りますよ」と声をかけながら、トランクを手に去っていった。多くの人々が、遠足列車で知らぬ駅に降り立ったような、呆然としつつも疲れと喜びの入り混じった表情をしていた。
やがて、群衆の混雑はさらにひどくなり、混乱は極まった。暗闇の中で、駅員たちが「こちらへ!こちらへ!」と声を枯らして叫んでも、旅人たちの耳には届かなくなっていた。
ヒヤシンス修道女は、すでに列車から降り立ち、死者をクレール・デ・ザンジュ修道女に託して、慌てて炊き出し車両へと向かった。彼女は混乱の中で頭がいっぱいになり、フェラン医師に助けを求めようと考えていた。幸運にも、車両の前でフルカード神父を見つけた。彼女は低い声で、事故のことを打ち明けた。神父は一瞬、苛立ちの仕草を見せそうになったが、すぐにスイール男爵を呼び寄せ、彼の耳元で囁いた。数秒間、密やかな会話が交わされた後、スイール男爵はすぐさま人混みをかき分け、二人の担架係を伴って進んだ。彼らは、覆いをかけた担架を運んでいた。そして、その死者は、まるでただの気絶した病人のように静かに運び去られた。巡礼者たちは、到着の興奮の中で、それに気を留めることもなかった。
担架係たちは、スイール男爵を先導に、遺体を荷物預かり所の一室へと運び、一時的に樽の後ろに安置した。そのうちの一人、金髪の小柄な男、ある将軍の息子は、そこに残り、遺体のそばに立っていた。
またあらたな登場人物、abbé Des Hermoises デゼルモワーズ神父を記録しておいてください。
返信削除彼は軽薄ではなさそうですが、ちょっと曲者な予感。
デゼルモワーズ神父(abbé Des Hermoises)を新たな登場人物として記録しました。
削除軽薄ではなさそうですが、ちょっと曲者な予感がする人物ですね。
今後の描写を見ながら、彼の性格や役割を掘り下げていきましょう。
ところで、abbé と père はどう違うんですか?
返信削除フランス語の **「abbé」** と **「père」** はどちらも「神父」と訳されることが多いですが、ニュアンスや使われ方に違いがあります。
削除### **1. abbé(アベ)**
- **本来の意味**:「修道院長」→ 近代以降は「世俗司祭」の称号に変化
- **特徴**:
- 17世紀以降、フランスでは **世俗司祭(一般の教区で働くカトリックの司祭)** に「abbé」という称号がよく使われた。
- 貴族の家庭教師を務めたり、文学サロンに出入りしたりするような **「世俗的な」司祭** に対して使われることもあった。
- 近代以前では、司祭として正式な任務についていなくても、神学校を出た人や神学を学んだ人が「abbé」と呼ばれることもあった(例:「アベ・プレヴォ」「アベ・シェリエ」)。
- 現在のフランスでは、一般的な司祭に「abbé」を使うことは少なくなり、主に**伝統的な表現**として残っている。
### **2. père(ペール)**
- **本来の意味**:「父」→ 「司祭(神父)」の敬称として使用
- **特徴**:
- 修道会に属する司祭(修道士でもある司祭)に対して使われることが多い。
- 例えば、イエズス会、ドミニコ会、フランシスコ会などの修道士司祭は「père」と呼ばれる。
- 教会の聖職者に対する一般的な呼びかけとしても使われ、現在では **「神父」全般に広く使われる**。
- 日本のカトリック教会で「神父」といえば、大抵「père」に当たる。
### **ルルドの登場人物に当てはめると…**
- **ピエール・フロマン神父(père Pierre Froment)** → 彼は普通の教区司祭なので「père」
- **デゼルモワーズ神父(abbé Des Hermoises)** → 彼は世俗的な神父(少し自由な立場)なので「abbé」
ルルドの場面では、デゼルモワーズ神父が「abbé」と呼ばれているのは **「彼が教会の公式な立場から奇跡を支持しているわけではなく、やや距離を置いた存在だから」** というニュアンスが含まれているかもしれませんね。