しばしのあいだ、ふたりは口を閉ざした。信仰の深淵が自分たちの間に横たわっているのを痛切に感じながら、残酷な悲しみに沈んでいた。彼らがこれ以上、互いに近づくことはもうないだろう――それがもはや決定的であることに、そしてその距離を埋められないことに、絶望していた。天すらも、ふたりの絆を結び直すことを拒んだのだ。彼らは並んで座り、別れの涙を流していた。
「わたし……」と、彼女は苦しげに言葉を継いだ。「あんなにあなたの回心を祈っていたのに……あんなに幸せだったのに……! あなたの魂が、わたしの魂に溶け込んでいくように感じて……いっしょに救われたことが、あんなにも甘美だったのに! わたし、生きる力を感じていたの、ええ、世界を持ち上げられるくらいの力を!」
彼は何も言わなかった。涙だけが、絶えることなく流れ続けていた。
「なのに……」と彼女は続けた。「癒やされたのは、わたしひとり……この大いなる恵みを、あなた抜きで受けたなんて! こんなにも見捨てられて、こんなにも絶望しているあなたを見ていると、胸が張り裂けそうになるの……わたしは、恵みと喜びで満ちているというのに……ああ、聖母さまはなんて厳しいの! なぜ、わたしの体を癒やすと同時に、あなたの魂を癒してくださらなかったの?」
それは最後の機会だった――彼は語るべきだった。この無垢な少女に、理性の光をもたらすべきだった。奇跡の正体を語り、真実を分かち合ってこそ、人生は癒しのわざを完成させ、ふたりを結びつける勝利の時を迎えたはずなのだ。
彼もまた、癒されていた。いまや理性は健やかであり、彼の涙は信仰を失ったことへのものではない。彼が喪ったのは、彼女自身だったのだ――そのことにこそ、彼は泣いていた。
だが、その大きな悲しみの中で、彼の心を満たしたのは、どうしようもない哀れみだった。
いいや、違う。彼はこの魂を乱すまい。信仰を奪いはすまい――この世の苦しみの中で、もしかしたらいつか、彼女の唯一の支えとなるかもしれぬ信仰を。子どもや女に、理性の苛烈な英雄主義を求めることはできぬのだ。彼にはその勇気がなかった。それどころか、自分にはその権利さえないのだと感じていた。それはまるで、彼にとっては暴力であり、残酷な殺人に思えた。
そして彼は語らなかった。よりいっそう熱い涙を流しながら、愛を捧げるように沈黙を守った。彼女の無垢さを守るため、彼女の幸福を壊さぬため――自らの幸福を、絶望のうちに犠牲にして。
「……ああ、マリー、僕はなんて不幸なんだ!」
「この道の上にだって、監獄にだって、これほどまでに不幸な者はいない……! ああ、マリー、君が知らないだけで……僕がどんなに不幸か、君に分かってもらえたなら……!」
マリーは呆然とし、震える腕で彼を抱きしめ、兄妹のように慰めようとした。その瞬間、女としての直感が目覚め、すべてを悟った。そして彼女もまた泣き出した。人間の意志、神の意志――それらがふたりを引き裂いていることに気づいたからだった。
これまで彼女は、そんなことなど考えたこともなかった。だが、いま突然、人生が――情熱と闘争と苦しみに満ちた人生が、目の前にひらけたのだった。
彼の傷ついた心を少しでも慰めたいと、彼女は何か言葉を探し、声にならぬほどのかすれた声で、悲しみに震えながら、やっとこうささやいた。
「……わかってる、わかってるの……」
やがて、彼女は答えを見つけた。そして、それはまるで天使たちにしか聞かれてはならぬ秘密のように思えたのか、そわそわと気にして、車内を見回した。けれども、そこにはさらに深く眠りが降りていたようだった。父はまだ眠っていた、大きな子どものような無垢さのままで。巡礼者たちも、病人たちも、激しく揺れるこの列車に身を任せたまま、誰ひとり動いていなかった。ヒヤシンス修道女でさえ、圧し掛かるような疲労に屈して、ついにまぶたを閉じていた。彼女もまた、自分の席のランプにスクリーンを引いていた。そこにはもはや、曖昧な影ばかりで、無名の物体の中にぼんやりと身体が埋もれ、ただ嵐のような風が吹き抜け、狂おしく駆ける闇の奥へ、限りなく遠くへと押し流されていく一群があるだけだった。
マリーは、車窓の外を走り去ってゆく漆黒の田園風景にも、警戒心を抱いた。その見知らぬ景色は、左右から列車を呑みこみつつ、何の森を、何の川を、どんな丘を通り過ぎているのかさえ分からぬまま、ひたすら続いていた。つい先ほど、一瞬だけ火花のような明かりが現れた――もしかすると、どこか遠くの鍛冶場の火、あるいは働く者や病める者の、物悲しい灯りだったかもしれない。だが、すぐにまた、深い夜が押し寄せてきた。それは名もなき、暗く、無限の海であり、自分たちはただそのなかを、ますます遠く、どこでもなく、どこまでも運ばれているようだった。
するとマリーは、羞じらうように頬を紅潮させながら涙のなかで、そっとピエールの耳元に唇を寄せて囁いた。
「聞いてください、ピエール……わたしと聖母のあいだには、大きな秘密があるのです。それは誰にも話さぬと誓ったこと……でも、あなたはあまりに不幸で、苦しんでいるから……聖母様もきっとお許しくださる。だから、お話しします」
そして、吐息のような声で続けた。
「あの夜のこと……そう、洞窟の前で過ごした、あの燃えるような恍惚の夜に、わたし、聖母様に誓ったのです。もし癒してくださったら、わたしの処女性をささげると……。そして、本当に癒された今——わたし、二度と結婚はしません。いいですか、ピエール? わたしは、決して誰とも結婚しません」
ああ、それはまさに思いがけない甘美な慰めだった。傷つききった彼の心に、露のようにやさしく降りそそいだ。神聖な魅力がそこにあり、言いようもない救いがあった。彼女が他の誰のものにもならないなら、それはつまり、どこかで彼のものであり続けるということだ。彼の痛みを、彼女は完全に理解していたのだ。そして、それを癒すために何を言えばよいかも。生き続ける希望さえ、そこにあった。
ピエールは、彼女に応えたかった。感謝の言葉を伝えたかった。彼女にも、自分は永遠に彼女のものだと、少年のころから彼女をどれほど愛してきたか、言いたかった。かつて交わしたたった一度の接吻が、彼の生涯にどれほど芳香を残したかを語りたかった。けれどもマリーは、それをさえぎった。すでに心配していたのだ、この清らかな一瞬を壊してしまうことを。
「だめ、だめよ、ピエール。これ以上はだめ。きっと、それはよくないこと……。わたし、すごく疲れているから。今なら、安心して眠れそう」
そして、彼女はそのまま、ピエールの肩に頭をもたせかけ、すぐに眠りに落ちた。信頼しきった妹のように。彼はしばらく目を閉じずにいた。ふたりで味わった、あの「諦めの幸福」のなかに佇みながら。これで、すべては終わったのだ。犠牲は果たされたのだ。彼はこれから独りで生きていく。ほかの人々の人生の外に。女を知ることは決してない。彼から生まれる命は、決して存在しない。
彼に残されたのは、ただ慰めとしての誇りだけだった。この意志して受け入れた自己犠牲のなかに——自然を逸脱した、悲愴な存在のなかで。