2025年10月11日土曜日

ローマ 第103回

 第十章

 翌日、ピエールは——ただ一つ、「この問題を終わらせたい」という思いに突き動かされ、行動を起こそうとした。だが、いざ出発となると迷いが生じた。最初に誰を訪ねるべきか? どの人物から面会を始めるのが得策なのか? 少しの誤りが命取りになる、この複雑で虚栄に満ちた世界で、慎重にことを運ばねばならなかった。

 ちょうどそのとき、部屋の扉を開けると、廊下にヴィジリオ神父(枢機卿付きの秘書)の姿が見えた。彼はピエールにとって、まさに神の采配のような存在だった。

「神父さま、ちょっとお願いがあるのです。どうか助言をいただけませんか。」

 ピエールはそう言って彼を部屋に招き入れた。

 ヴィジリオ神父は、黄色味を帯びた顔色をしたやせ細った小柄な男で、慢性的な熱病のようにいつも震えていた。しかしその慎重で臆病な性格の奥には、あらゆる情報に通じているという確信をピエールは感じ取っていた。これまでは彼が自分を避けていたのも、単に「巻き込まれるのを恐れて」だったのだろう。それが最近になって、彼の目には奇妙な光が宿るようになっていた。それは、ピエールと同じく、長い停滞の中で焦燥に駆られている証拠のようでもあった。

 神父は、逃げようとはしなかった。

「失礼いたします。この部屋、少々散らかっておりまして……」
 ピエールは苦笑しながら言った。
「今朝もまたパリから冬服が届いたところなんです。想像してみてください。私は十五日ほどの滞在のつもりで小さな鞄一つで来たのに、もう三か月近くが過ぎようとしています。それなのに、到着した日の朝から一歩も前に進んでいない。」

 ヴィジリオ神父は、わずかにうなずいた。

「ええ、ええ、存じています。」

 そこでピエールは説明した。ナーニ大司教がコンテッシーナを通じて「行動を起こし、皆に会って、自著を弁護するように」と伝えてきたこと、だが自分はどんな順序で誰を訪ねるべきか分からず、途方に暮れていることを。

「たとえば、まずは私の著書の審査報告を担当しているというフォルナロ司教のもとへ行くべきでしょうか?」

 その名を聞いた瞬間、ヴィジリオ神父は身を震わせて叫んだ。

「なんと! モンシニョール・ナーニがそこまで…! あなたに名前を明かしたというのですか? それは驚くべきことです、想像以上に!」

 そして、抑えきれぬ激情に駆られたように続けた。

「いえ、いけません! フォルナロ司教から始めてはいけません。まずは禁書目録審議会(インデックス)の長官、サングイネッティ枢機卿猊下のもとへ、謙虚な挨拶の訪問をなさってください。もしも猊下が、あなたの最初の訪問が他の者に向けられたと知ったなら——決して許しはしません。」

 神父は言葉を止め、声をひそめた。

「……そして、必ず知られることになります。ローマでは、すべてが漏れるのです。」

 その後、彼は突然の勇気と共感に突き動かされたように、ピエールの両手を握った。

「親愛なるフロマン神父、あなたは実に純粋なお方です。私の胸が痛みますよ。だからこそ、あなたのために少しでも役立ちたいと思うのです……。でも、どうか、私に不可能なことを求めないでください。もし私が語れない危険の数々をご存知なら……!

 とはいえ、これだけは申し上げられます。ボッカネーラ枢機卿猊下に望みをかけてはいけません。私は何度も聞きました。猊下は、あなたの著書を全く容認しておられません。

 ただ……あの方は聖人です。誠実で清らかな魂の持ち主です。ですからあなたを攻撃することもないでしょう。ただ中立の立場を保たれる。——それは、あなたを庇護するコンテッシーナ、彼の愛する姪君への敬意からです。ですから、もし猊下にお会いしても、ご自身の弁明をしようなどとは思わないでください。逆効果になります。」

 ピエールはその告白を聞いても、さほど落胆はしなかった。初めて枢機卿と対面したときから、そしてその後に数度訪れた際にも、彼が決して味方にはならないことを、とうに理解していたからである。

「では、せめてその中立に対してお礼を申し上げに伺うことにしましょう。」

 そう言うと、ヴィジリオ神父は青ざめ、再び恐怖に囚われた。

「いけません! どうかおやめください! 猊下が、私が口を滑らせたとお思いになったら……それこそ破滅です! 私の立場は終わりですよ。——いいですか、私は何も言っていません。とにかくまずは枢機卿方、すべての枢機卿方をお訪ねください。それ以外のことは、私は何も言っていません。そういうことでお願いします。」


2 件のコメント:

  1. ピエールがローマに来たのは9月3日。それから3か月近くたっているということだから11月中旬から下旬ということのようですね。この季節のローマはどんなかんじなんだろう?

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    1. うん、そらさんの読み、まさに的を射ていますね。
      『ローマ』のこの場面は、9月初旬の到着から「三か月近く」とあるから、ちょうど11月中旬〜下旬のローマです。
      これは、古都が一年のうちでもっとも「静かに沈む季節」なんです。
      ちょっと風景を描いてみましょう。

      🍂 11月のローマ — “l’autunno romano”
      光の質が変わる季節です。
       夏の白くて強い太陽はすっかり衰え、斜めから差し込む金色の光が、石畳や古いファサードを淡く染めます。
       午後4時を過ぎると、もう黄昏の影が長く伸びて、空は銀灰色から紫がかった青へと沈んでいきます。


      ティベレ川(テヴェレ)は少し水かさを増していて、流れは重く、時に濁って見えます。
       河岸には落ち葉が吹き寄せられ、僧衣のように黒いカラスがあちこちに舞う。


      空気はしっとり冷たい。
       昼間は15度前後でも、夜は一気に冷え込む。
       湿気を帯びた風が、サン・ピエトロ大聖堂の広場を吹き抜けると、遠くの鐘の音がくぐもって聞こえるんです。


      街のリズムも変わる。
       観光客は減り、地元の人々が厚手のマントやスカーフをまとって歩きます。
       カフェでは、冷たいジェラートの代わりに、熱いカッフェ・コレット(エスプレッソにグラッパを少し加えたもの)が人気になる。
       焼き栗の香りが通りに漂い始めるのもこの頃です。



      ゾラの描く「ローマの晩秋」は、単なる背景ではなく、ピエールの心象そのものと重なっているんですよ。
      つまり——
      夏の情熱(信仰への衝動)は去り、


      冬の沈黙(現実の冷たさ)が迫り、


      その間にある**「秋の迷い」**が、まさにこの第10章のトーンです。


      ピエールは外では冷たい石の都に、内では信仰の行き場を失って。
      ローマという街が、その孤独を写し取る鏡のようになっている。

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ローマ 第104回

   その日はそれ以上話そうとせず、ドン・ヴィジリオは震えるような身ぶりで部屋を出ていった。そして、通路の左右を不安そうに見回しながら、炎のような黒い目であたりを探るようにして去っていった。ピエールはすぐに外出し、サングイネッティ枢機卿を訪ねることにした。時刻は午前10時。まだ面...