2025年10月17日金曜日

ローマ 第109回

  再び、ダンジェリス神父のやせた顔に、かすかな笑みが浮かんだ。唇が皮肉に歪み、そこには最も鋭い軽蔑の影が走った。彼の顔色はいっそう蒼白となり、知的な光を宿した灰色の瞳が燃え立った。

「――ああ、モンシニョール・ナーニがあなたを寄越したのですか……。なるほど。では、もしあなたが庇護を必要としているのなら、わざわざ他の者のもとへ行くまでもない。彼自身のもとへ行けばよいのです。彼は全能です……行きなさい、行きなさい、彼のところへ。」

 それが、ピエールがこの訪問から得た唯一の“励まし”だった――彼をここへ送り出した本人のもとへ、もう一度戻れという忠告だけ。ピエールは、自分の足元が崩れ落ちるような感覚に襲われ、いったんボッカネーラ宮へ戻ることを決意した。行動を続ける前に、まず考え、整理し、理解しなければならなかった。すぐにドン・ヴィジリオに相談する考えが浮かんだが、幸運にもその晩、夕食後の廊下で、寝室へ向かうところの秘書に出くわした。手には小さな燭台を持っていた。

「お話ししたいことが山ほどあります。お願いです、少しだけ、部屋にお入りください。」

 しかしドン・ヴィジリオは手を上げて、彼を制した。そして、非常に低い声でささやいた。

「――一階でパパレッリ神父を見かけませんでしたか? 彼が我々をつけていました。」

 ピエールはたびたび屋敷内でその従者――黒い裾の長い衣をまとい、ふやけた顔に、陰険で女じみた好奇心を浮かべた男――を見かけていたが、特に気に留めてはいなかった。だから、この問いには意外を覚えた。だが、ドン・ヴィジリオは返事を待たず、廊下の端まで戻っていき、耳を澄ませて長く聞き入った。やがて猫のように静かに戻り、手にした燭を吹き消すと、さっと隣の部屋――ピエールの部屋――に入った。

「――これでよし。ここなら安心です。」
彼は小声でつぶやいた。「サロンにはいない方がいい。壁は二枚ある方がましだ。」

 ランプを机に置き、ふたりが向かい合って腰を下ろしたとき、薄暗い部屋の中はどこか物悲しかった。亜麻色の灰じみた壁紙、色の合わない家具、すり減った床――長い時を経て褪せたものの哀れさが漂っていた。

 ピエールは、そのとき初めて、司祭がいつになく激しい熱に襲われているのを感じた。その痩せた身体は震え、いつものように黄ばみ、やつれた顔の中で、炭のように黒く燃える瞳がいっそう強く光っていた。

「――体調がお悪いのですか? 無理をなさらなくていいのですよ。」

「悪い、ああ、そうです。身体中が焼けるようです。でも、むしろ話したいのです……もう黙ってはいられない、もう限界です! いつかは吐き出さなければならない。」

彼は、己の病苦から逃れようとしているのか、それとも長い沈黙の重みに押しつぶされそうで、ついに口を開かざるを得なかったのか。すぐにピエールに、これまでの経過――枢機卿サルノ、モンシニョール・フォルナーロ、そしてダンジェリス神父のもとでの一連の出来事――を話すよう促した。聞きながら彼の興奮は高まり、頬が熱に赤く染まった。

「――そうか、そうだ、それでいい。もう驚きはしないが、怒りがこみ上げてくる。君のために、いや、それ以上に、自分のために……! 腹が立つ、病気になりそうだ! ああ、これが私の苦しみを呼び覚ますのだ……!」

 彼は続けた。

「――枢機卿サルノは論外だ。あの人は別世界に生きている。遠く、永遠に遠く、誰の助けにもならん。だが、フォルナーロ! あのフォルナーロだ!」

「とても愛想がよく、むしろ親切な方でした。おそらく、私との面会のあとでは、報告も少しは穏やかなものになると思います。」

「彼が? とんでもない!」
 ヴィジリオの声が震えた。
「優しげに見せれば見せるほど、あとで牙を剥くやつだ。君を食いものにする、弱者を糧に肥え太る! あの優雅さの裏で、常に機をうかがっている――哀れな犠牲者の破滅が、権力者の耳に心地よく響くことを知っているからだ!
……私はまだ、ダンジェリスの方がましだと思う。恐ろしい男だが、少なくとも正直で勇気がある。知性もある。だが彼なら、もし権限があれば、君を藁一束のように焼き尽くすだろう……。

――ああ、もしすべてを君に語れたなら! もし私が見てきた地獄の奥を覗かせることができたなら! あの恐るべき野心の欲望、入り組んだ陰謀の糸、買収と裏切りと、そして――罪だ! 罪そのものだ!」

2 件のコメント:

  1. ドン・ヴィジリオ、端役だと思っていたら、いきなりキーパーソンになってきた!
    彼、マラリアにかかってるのに、大丈夫か!?

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    1. そう、それ!まさにゾラの筆の妙なんですよ、そらさん🐈‍⬛✨
      ドン・ヴィジリオ、最初は「地味な秘書」「病弱で陰の薄い人物」として登場しましたが、ここから「ローマ」の核心に踏み込む人物になっていくんです。
      彼は、いわばこのヴァチカンという巨大な権力装置の内部に閉じ込められた良心。
      ピエールが外から理想をぶつけていくのに対し、ヴィジリオは中から腐敗と対峙している。
      ゾラはこの二人の対話で、「信仰と理性」「純粋さと体制」「人間の良心と宗教制度」の対立を描こうとしているんです。
      そしてお察しのとおり――
      はい、彼の発熱はマラリア(当時ローマの常在病)ですが、単なる病ではなくて、ゾラ的には象徴的な「道徳的・霊的な熱」でもあります。
      つまり、彼の身体を蝕んでいるのは病気と同時に、内部から腐っていく教会制度そのものなんですね。
      それに抗うように、彼は「しゃべらずにはいられない」衝動に駆られて、ピエールに真実を打ち明け始めるわけです。
      次の場面では、彼の語りが一気に熱を帯びていきます。
      ヴィジリオの「苦悩する知性」と「信仰の残り火」がぶつかり合うあの独白――
      ゾラがヴァチカンを最も辛辣に描くくだりに入っていきます🔥

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