2025年11月1日土曜日

ローマ 第124回

  それからはもう、ただ雑然としたざわめきが聞こえるだけだった。バルコニーは空となり、ピエールの待機が再び始まった。陽光に満ちた応接間の中で、それは穏やかで心地よい待ち時間だった。しかし突然、執務室の扉が大きく開かれ、召使いが彼を中へと導いた。ピエールは驚いた。というのも、部屋には枢機卿がひとりきりで、さきほどまでいた2人の司祭の姿は見えず、どうやら別の扉から退出したようだったからだ。

 柔らかな金色の光に包まれ、枢機卿は窓のそばに立っていた。色づいた顔、大きな鼻、厚い唇――60歳を過ぎてなお、ずんぐりと力強い若々しさを漂わせていた。そして、最も身分の低い者に対してさえ、政治的な思慮から見せるあの父性的な笑みを再び浮かべていた。

 ピエールが身をかがめ、指輪に接吻すると、枢機卿はすぐに椅子を示した。

「お掛けなさい、我が子よ、お掛けなさい……。さて、あなたはあの不幸な著書の件で来られたのですね。お話しできて、まことにうれしく思います。」

 枢機卿自身も椅子に腰かけた。それはローマを一望する窓の前であり、彼はその眺めから離れられない様子だった。ピエールは、彼があまり聞いていないことに気づいた。再びその眼は遠く、あの熱烈に求める獲物――ローマの方角へと注がれていた。ピエールが来訪をわびる言葉を述べている間にも、枢機卿の表情は完璧なまでに穏やかで、他人のために尽くす姿勢を崩さなかった。その冷静さの裏に、どれほどの野心の嵐が吹き荒れているかを思うと、ピエールは驚嘆した。

「猊下がどうかお許しくださいますよう……」

「いやいや、よく来てくれました。私の体調がすぐれず、こうして留まっているのですから……。もっとも、少しは回復してきていますしね。あなたが弁明を申し出てくださるのは当然のこと。ご自身の著作を擁護し、私の判断を明らかにしようとなさるのは、まことに自然です。実のところ、まだお目にかからぬことを不思議に思っていたくらいですよ。あなたの信仰が篤く、裁く者をも導こうと努力を惜しまぬ方だと聞いていますから……。さあ、話してください、我が子よ。赦す喜びをもって、あなたの言葉を聞きましょう。」

 ピエールは、その温和な言葉に思わず心をゆるめた。希望がよみがえった――禁書目録省の長、あの全能の人物を自分の味方にできるかもしれない、と。彼には、サングイネッティ枢機卿が稀有の知性と洗練された親しみやすさを持つ人物に見えた。ブリュッセル、そしてウィーンで教皇大使を務めた経験から、人をうっとりと満足させつつ、何も与えずに返すという世渡りの妙を心得ていたのだ。

 そのためピエールも、再び使徒の情熱を取り戻した。彼は熱心に、自らの理想を語った――すなわち、来たるべきローマ、キリストの愛に立ち返り、貧しき者・卑しき者を抱擁することによって、再び世界の中心となるローマを。

 サングイネッティは微笑み、やわらかくうなずき、感嘆の声をもらした。

「すばらしい、すばらしい! まったく見事です……。ああ、私もあなたと同じ考えですよ、我が子! これ以上の言葉はありません……。それはまさに真理そのものです。あなたは、善き精神をもつすべての者とともにあります。」

 それから彼は、詩的な部分にも深く感動したと語った。教皇レオ十三世と同じく――おそらくは競うように――古典ラテン文学に通じた人物と見なされたいと望む彼は、とりわけウェルギリウスに対して限りない愛着を抱いていた。

「よく知っていますとも。春の再来を描いたあの一節――冬に凍えた貧しき人々を慰めるというくだり――あれを私は三度も読み返しましたよ! あなたはご存じですか、自身の文体にどれほど多くのラテン的表現が宿っているか? 私はあなたの著書の中に、『牧歌集』にも見いだせるような言い回しを五十以上も数えました。まことに魅力的です、あなたの本は、真の魅力に満ちています!」

 彼は愚かではなかった。この若き司祭の中に、すぐれた知性を感じ取っていた。だが、興味を抱いたのは彼そのものではなく、むしろそこから引き出せる利得だった。彼の思考の根底には常にひとつの欲求があった――神が遣わす人々から、自らの栄光のために役立つものを搾り取ること。彼はひとときローマから視線を外し、ピエールをまっすぐ見つめた。相手の言葉に耳を傾けながら、考えていた――
「この男を今すぐ、あるいは将来(自分が教皇となった暁に)どう使えるだろうか」と。

 しかし、ピエールはまたしても過ちを犯した。教会の世俗権力を批判し、「新しい宗教」という不用意な言葉を口にしてしまったのである。

2 件のコメント:

  1. ピエールも純粋で嘘を言えないやつだから、ついつい余分なこと言っちゃうんだな。
    私は、ピエールはかなりゾラ自身を投影したキャラクターだと思うんですよね。

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    1. まったく、その通りです、そらさん。
      ピエール=フロマン神父は、ゾラの分身として読むのが一番しっくりきます。
      ゾラは『ルルド』『ローマ』『パリ』の三部作全体を通して、「信仰」「科学」「社会正義」という三つの柱をめぐる精神の遍歴を描いていますが、その中心にいるのがこのピエールなんですよね。
      ピエールは、理想を語らずにはいられない――でもその理想が、聖職者の世界では危うい。
      だから彼が「新しい宗教」と言ってしまうのは、ゾラ自身の胸の内が抑えきれずに漏れ出たようなものです。
      彼には策略も打算もなく、誠実すぎて破滅的。
      それはまさに、ゾラという人間そのものの誠実さと孤独の反映ですね。
      一方のサングイネッティ枢機卿は、そのゾラ的純粋さの完全な対極。
      信仰を政治的に利用し、言葉を使って他人を操る。
      ピエールが「真理を語る」人なら、サングイネッティは「真理を使う」人。
      この二人の会話は、まるでゾラ自身が自分の中の理想主義と現実主義を対話させているようでもあります。

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