2025年11月3日月曜日

ローマ 第126回

  そして、二人の客が席を立ち、テラスでコーヒーを飲むことにしたので、話題が変わった。

「今晩は、」と伯爵が話を再び持ち出した。「ボンジョヴァンニ公の夜会にお出かけになりますか? 外国の方には、なかなか珍しい見ものですよ。ぜひお見逃しにならぬように。」

「ええ、招待状をいただいています。」とピエールは答えた。「わたしの友人で、我が国の大使館付のナルシス・アベール氏が招いてくれまして、彼が案内してくれることになっています。」

 実際、その夜、コルソ通りにあるボンジョヴァンニ宮で夜会が開かれることになっていた。冬のあいだに二度か三度しか催されない、きわめてまれな盛宴のひとつである。しかも今回は、その豪華さにおいて群を抜くと噂されていた。というのも、それは若い令嬢チェリア、つまり小さな公女の婚約を祝う席だったからである。噂によれば、公爵は烈しい怒りにかられて娘を平手打ちにしたあげく、自らも卒中を起こしかけるほど危険な状態に陥ったものの、ついには娘の穏やかで揺るぎない意志に屈し、ついにサッコ大臣の息子、アッティリオ中尉との結婚を承諾したのだという。この報せは、ローマ中のサロンを、いわゆる「白い社会」も「黒い社会」も問わず、ひっくり返すほどの騒ぎにしていた。

 プラダ伯爵は再び上機嫌になった。

「いやあ、見事な見ものになりますよ、保証します! わたしとしてはね、従兄のアッティリオが心からうれしい。実に正直で、感じのいい青年なんです。それに、ボンジョヴァンニ家の古い広間に、我が叔父サッコが、ついに農務大臣として入場するのを見る――これを逃す手はありませんよ。まったく、素晴らしく、そして壮観なことでしょう……。今朝、父が言っていましたよ。あの人は何事も真面目に受け取るたちでね、『興奮して一晩じゅう眠れなかった』って。」

 彼はそこで一旦口を止め、すぐに言葉を継いだ。

「ところで、もう2時半ですよ。次の列車は5時までありません。どうなさるつもりです? わたしの馬車でローマまで一緒に帰られたらいかがです?」

 だがピエールは慌てて首を振った。

「いや、いや、どうもご親切にありがとうございます! 今晩は友人のナルシスと食事をする約束なので、あまり遅くなれません。」

「いやいや、遅くなりませんよ、まったく! 3時に出れば、5時前にはローマに着きます。日が暮れかけるころのこの道ほど、すばらしい散策はありません。それにね、壮麗な夕焼けをお約束しますよ。」

 あまりにもしきりに勧められ、司祭はついに折れた。あふれるような好意と快活さに、すっかり心を動かされたのだった。二人はさらに一時間ほど、ローマやイタリア、フランスの話を愉快に語り合い、楽しい時を過ごした。そののちフラスカーティの町に少し立ち寄り、伯爵が顔なじみの請負業者に用を済ませるのを待った。やがて3時の鐘が鳴るころ、二人は並んでヴィクトリア馬車のやわらかなクッションにもたれ、二頭の馬の軽やかな駆け足に揺られながら出発した。

 それはまさしく言葉どおりの至福の帰路だった――広大にひらけた荒涼たるカンパーニャを横切り、澄みわたる大空の下、秋のもっとも穏やかな日の、実に美しい終わりのひとときに包まれて。

 まず最初に、ヴィクトリアは勢いよくフラスカーティの坂を下らねばならなかった。両側には途切れることなく葡萄畑とオリーブ林が続いていた。石畳の道は曲がりくねり、ほとんど人通りもない。古びた黒いフェルト帽をかぶった百姓が二、三人、白いラバ、ロバに引かれた荷車が一台見えるばかりであった。酒場が賑わうのは日曜日だけで、職人たちが気ままにやって来て、近くの別荘で子山羊の肉を食べるのが常であった。道の曲がり角に、ひときわ大きな泉があり、その前を通り過ぎた。しばらくして、一群の羊が行進してきて、しばらく道をふさいだ。

 そしていつも、ゆるやかに波打つ広大な赤褐色のカンパーニャの果てには、遠くローマが見えていた。夕暮れの紫がかった靄の中で、その姿は次第に沈みゆくように見え、馬車が坂を下るにつれて、ますます低くなっていった。ついには地平線のすれすれに、灰色の細い線となり、いくつかの白い建物の壁が陽を受けてきらめいているだけとなった。そしてやがて、その姿は地に没し、果てしない田園のうねりの下に溶けていった。

 今やヴィクトリアは平野部を走っていた。後方にはアルバの山々が遠ざかり、右も左も前方も、広大な牧草地と刈り跡の原がひろがるばかりだった。そのとき、伯爵が身を乗り出して叫んだ。

「ほら! 見なさい、あそこだ。今朝のあの男じゃないか、サントボーノその人だ……! ははっ、なんてやつだ、あの歩きっぷり! うちの馬でも追いつくのがやっとだ。」

 ピエールも身を乗り出した。まさしくそれは、サント=マリー=デ=シャン教会の主任司祭であった。大柄で節くれだった体つき、まるで鉈で削り出したような風貌。黒い長いスータンをまとい、やわらかな光の中、金色がかった明るい陽光を全身に浴びて、まるで墨のしみのように濃い影をつくっていた。そして、その歩みは規則正しく力強く、まるで「運命」そのものが歩んでいるかのようであった。右手には何かをぶら下げていたが、それが何であるかははっきりとは見えなかった。

 やがて馬車が彼に追いつくと、プラダ伯爵は御者に減速を命じ、声をかけた。

「こんにちは、神父さま! お元気で?」

「ええ、とても元気です、伯爵さま。ありがとうございます!」

「それで、そんなに勢いよくどちらへ?」

「伯爵さま、ローマへ行くところです。」

「なんと、ローマへ? こんな遅い時間に?」

「ええ、ほとんど同じころにあなたさま方と着くでしょう。道など怖くありませんし、これはちょっとした稼ぎになります。」

 彼は一歩も歩調をゆるめず、ほとんど顔も向けずに、車輪のそばで大股に歩を延ばしていた。プラダはこの出会いを愉快がって、ピエールに小声で言った。

「見ていなさい、彼は我々を楽しませてくれるぞ。」

 それから大声で言った。

「ローマへ行くというのなら、神父さま、お乗りなさいよ。空席が一つあります。」

 サントボーノは、ためらうことなくすぐに応じた。

「それはありがたい、まことに感謝いたします……! そのほうが靴の底も減らさずに済みますからな。」

 そして彼は馬車に乗り込み、補助席に腰を下ろした。ピエールが礼儀正しく伯爵の隣の席を譲ろうとしたが、サントボーノはぶっきらぼうなほどの謙遜さでそれを固辞した。そのときになってようやく二人は、彼が手にしていたものが何であるかを見分けた――それは、葉で美しく覆われた、いちじくの詰まった小さな籠だった。

 馬たちは再び軽快な速足で走りはじめ、馬車は見事な舗装道を進んでいった。

「それで、ローマへ行かれると?」と伯爵は神父を話に引き込もうとした。

「ええ、そうですとも。枢機卿閣下ボッカネーラ様に、このいちじくをお届けするのです。季節の最後のものでしてね、ささやかな贈り物を差し上げるとお約束していたものです。」

 彼はその籠を膝の上に置き、節くれ立った太い手で丁寧に支えていた。それはまるで壊れやすく、貴重なものでも扱うかのようであった。

「おお、あの有名なあなたのいちじくですか! なるほど、あれはまるで蜂蜜のようですな……。だが、そんなふうに膝の上に置いたままでは疲れるでしょう。さあ、預かりましょう。幌の中に置きますよ。」

 しかし神父は身を動かして、それを守るようにし、頑として手放そうとしなかった。

「ありがとうございます、ありがとうございます! なんの、不自由はありません。このままでけっこうです。こうしていれば、どんな事故も起こりませんからな。」

 自分の庭の果実に対するこのサントボーノの愛着ぶりは、プラダをすっかり面白がらせ、彼はピエールの肘を軽く突いた。そして再び尋ねた。

「で、枢機卿閣下は、そのいちじくがお好きなんですな?」

「ええ、伯爵さま、閣下はこの上なくお好きでいらっしゃいます。以前、閣下が夏を別荘でお過ごしになっていたころは、ほかの木の実など召し上がろうとされませんでした。ですからね、そのお好みがわかっている以上、喜んでいただけるのが嬉しくてなりません。」


2 件のコメント:

  1. いやあ、このサントボーノの態度、あやしくないですか?
    イチジクの籠を手放さないじゃないですか。もしかしたら、サングイネッティ枢機卿の宿敵であるボッカネーラ枢機卿に対する凶器とかが籠の中に隠されているかもしれないよ!

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    1. そらさん、さすが鋭い!😼
      まさにゾラのこの場面、読者にそう思わせるよう巧妙に仕掛けてあるんです。
      サントボーノの「イチジクの籠を決して手放さない」描写は、ただの農民的愛着にも見えますが――
      同時に、「異様な執着」「何かを隠しているような不自然さ」として読めます。
      しかも前の章を覚えておられますね。
      サントボーノは、あの恐ろしい台詞を放っていました。
      「ああ、もし天が遅れるなら、われわれが助けてやるさ。」
      この一言、明らかに“神の正義を人間の手で代行する”という危険思想を示しています。
      その延長で考えると、彼が「神に代わってボッカネーラを裁く」ための道具を運んでいる――
      という読みは、まさにゾラ的な宗教的狂信の暗示なんです。
      ゾラは、こういう「敬虔さと暴力性の紙一重」な人物を描くのが得意です。
      一見無垢な田舎司祭が、実は信仰の名のもとに破滅を運ぶ存在であるかもしれない。
      籠の中のイチジク――その蜜の甘さの奥に、流血の象徴を潜ませているかもしれない。
      ……とはいえ、ここではまだ確証はありません。
      ゾラは意図的に曖昧なまま、読者の不安を煽っています。
      「果たしてこの籠の中身は何なのか?」というサスペンスが、次章への見事なブリッジになっているのです。
      いやあ、そらさん、いいところ突いてますね。
      文学探偵の勘が冴えわたってる。
      ――さあ、この「籠の中身」の謎、次の翻訳でどう展開するか……見逃せませんね。

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