2025年1月17日金曜日

ルルド 第17回

  ヴィニュロン夫人は小柄で、顔は長く蒼白。血の気がなく、しっかりとしたブルジョア的な節度の中に貧相さを感じさせる。その姿は、息子のギュスターヴにも恐ろしい形で現れている。ギュスターヴは15歳だが、見た目は10歳にも満たない。体はねじれ、骸骨のようにやせ細り、右脚は貧血でほとんど使い物にならず、松葉杖なしでは歩けない。顔は小さく細く少し歪んでおり、ほとんど目しか残っていないような様子だが、その目は輝きに満ち、痛みによって研ぎ澄まされた知性を感じさせる。その目は、人の魂の奥底まで見通しているかのようだった。

 一人の年配女性が後からついてきた。顔はふっくらとしており、足を引きずるようにして歩いている。ヴィニュロン氏は彼女を紹介し忘れていたことに気づき、ピエールに戻って再び話し始めた。
「こちらは妻の姉、シェーズ夫人です。ギュスターヴのことをとても可愛がってくれていて、一緒に来たいと言ってくれました。」
 そして、声を低くして親しげに囁くように言った。
「このシェーズ夫人、絹商人の未亡人で、非常に裕福なんです。心臓に病があって、いつもそれを心配しています。」

 こうして、一家は一つのまとまりとなり、活気あふれる興味でワゴンの中の様子を眺めた。その場に人が次々と集まってくる中、父親は息子が中を見ることができるよう、ギュスターヴを一瞬持ち上げた。その間、伯母が松葉杖を持ち、母親も背伸びをして何とか見ようとしていた。

 ワゴンの中では、相変わらず同じ光景が広がっていた。一人の男が上体を起こしたまま隅に座り、体は硬直し、頭はオーク材の硬い壁にもたれかかっている。顔は蒼白で、目を閉じ、口は死の苦しみで引きつっている。彼の体を冷たい汗が覆い、ヒヤシンス修道女がときどき布でその汗を拭き取る。しかし彼女はもう口を開かず、焦ることもなく、再び穏やかな表情に戻り、天命を信じるようにじっと耐えていた。ただ、時折プラットホームの様子に目をやり、マッシアス神父が来ていないかを確認するだけだった。

「よく見てごらん、ギュスターヴ。」ヴィニュロン氏は息子に言った。「きっと、結核患者だろう。」
 ギュスターヴは、悪性リンパ腫に冒され、冷たい膿瘍が腰を蝕み、背骨の壊死が始まっている。そんな彼が、この死の苦悩に激しく惹きつけられているようだった。彼は恐れることもなく、悲しげに笑みを浮かべていた。
「なんてひどいことなの!」とシェーズ夫人が囁いた。心臓の発作がいつ急に起きてもおかしくないという彼女の不安は、彼女を青ざめさせた。
「まあ、誰にでも順番が来ますからね。我々は皆、死ぬ運命です。」ヴィニュロン氏が哲学的に答える。
 そのとき、ギュスターヴの笑顔には皮肉のような苦しげな色が宿った。それはまるで、彼が別の言葉を聞いているかのようだった。「伯母が僕より先に亡くなるだろう。そして僕は約束された50万フランを相続できる。それに僕自身、家族に負担をかけることなく長くは生きられないだろう。」そんな心の声が浮かんでいるようだった。

「降ろしてあげて」とヴィニュロン夫人が夫に言った。「そんなふうに持ち上げていたら、疲れてしまうわ。」
 その後、彼女とシェーズ夫人は、ギュスターヴを傷つけないように丁寧に動かした。この可哀そうな愛おしい子には本当に細やかな配慮が必要だった。少しの振動ですら心配になる状況だった。ヴィニュロン氏は、ギュスターヴを再びコンパートメントに戻すのが良いだろうと考えた。そして、二人の女性が彼を運びながら戻ろうとする間、彼は再びピエールに向き直り、非常に感情的な声で語った。
「ああ、神父様、もしあの子が天に召されてしまったら、私たちの人生も一緒に終わるようなものです……。私は、彼の伯母の遺産が別の甥や姪に渡ることの話をしているのではありません。それよりも先に、彼が彼女より先立つというのは、自然の摂理に反します。特に彼女の健康状態もこれですから……。しかし、どうしようもありません。我々はすべて神の摂理にゆだねています。そして、きっと聖母が最善を尽くしてくださると信じています。」

 やっとグリヴォットを診ていたフェラン先生から安心する報告を受け、ジョンキエール夫人も解放された。ただし、彼女はピエールに一言加えるのを忘れなかった。
「もうお腹がぺこぺこよ。ちょっと食堂へ走るわ……。でもね、もし彼女の咳がまたひどくなったら、すぐに知らせに来てちょうだい。」

 彼女は大急ぎでプラットホームを横切り、食堂にたどり着いた。しかしそこで新たな混乱に巻き込まれた。裕福な巡礼者たちがテーブルを争い、特に多くの神父たちが急ぎながら、食器やナイフの音に包まれていた。3、4人の給仕が忙しく動き回っていたが、群衆がさらにそれを邪魔していた。彼らはカウンターに押し寄せてフルーツやパン、冷たい肉を買い求めていた。
 その食堂の奥、レイモンドがデザニョー夫人とヴォルマー夫人と共に小さなテーブルで食事をとっていた。
「ああ! ママン、やっとだわ!」と彼女が叫んだ。「もう一度迎えに行こうかと思っていたの。少しぐらいは食べなくちゃダメよ!」
 彼女は旅の冒険や、急ごしらえの食事に夢中で、とても活き活きとしていた。
「ほら、あなたのために取っておいたマスのグリーンソース添えがあるわ。それとコートレットも。私たちはもうアーティチョークまで進んでるの。」

 それは素敵な時間だった。その場所は楽しい笑いに満ちており、見るだけでも気持ちが軽くなるようだった。
 特に若いデザニョー夫人が愛らしかった。金髪で、ふんわりと風になびく髪、小さくてミルクのように白い顔、くぼんだ頬が笑うたびにえくぼになり、非常に親しみやすい。彼女は裕福な夫と結婚していたが、毎年8月半ばのトルーヴィルの休暇中にも関わらず、3年間続けて全国巡礼に参加し、病人たちを助けるための病院女性として尽くすことを趣味としていた。それが彼女の情熱であり、震えるような憐みの心と、病人に全力を捧げる5日間への飢えだった。それを終えると、完全に疲れ果てながらも満たされた気持ちになっていた。
 ただ彼女の唯一の悩みはまだ子供がいないことだった。それを彼女は時々おかしなほど熱っぽく悔やみ、自分が慈善修道女になるべきだった運命を見誤ったのではないかと思うこともあった。



4 件のコメント:

  1. ギュスターヴは遺産相続のことを気にしているようですが、当時のフランスの親族間の遺産相続はどのような仕組みだったでしょうか。簡単に教えてください。

    返信削除
    返信
    1. 19世紀後半から20世紀初頭のフランスでは、**ナポレオン法典**(1804年制定)が遺産相続の基本原則を定めており、この法律はギュスターヴたちが生きた時代にも適用されていました。当時のフランスの遺産相続制度の特徴を簡単にまとめると以下のようになります。

      ### 1. **遺留分(Réserve héréditaire)**
      - 親族の中で相続権のある人(例えば子供や配偶者)は、遺産の一定割合を法的に確保できる「遺留分」が保障されていました。
      - 被相続人(遺産を残す人)は、自分の財産のすべてを自由に処分できるわけではなく、「任意分(quotité disponible)」として使える部分が制限されていました。
      - 子供が1人いる場合は遺産の半分が遺留分、2人いる場合は3分の2、3人以上いる場合は4分の3が遺留分として保証されていました。

      ### 2. **長子相続制の廃止**
      - 革命後、旧制度(アンシャン・レジーム)で採用されていた長子相続制は廃止され、すべての子供が平等に遺産を相続する仕組みになりました。
      - これは家族の遺産を均等に分ける社会主義的な傾向の制度として特徴的です。

      ### 3. **遺産の分割**
      - 遺産は、土地、建物、その他の財産を具体的に分割し、各相続人に分配されました。ただし、土地が分割されて小規模になるケースもありました(これは特に農村部で問題とされました)。

      ### 4. **相続順位**
      - 第一順位:被相続人の子供たち(嫡出子、非嫡出子、養子を含む)。
      - 第二順位:被相続人の親と兄弟姉妹。
      - 第三順位:被相続人の親戚(甥姪、従兄弟姉妹など)。

      ### ギュスターヴの場合の背景
      物語に登場するギュスターヴの場合、彼が亡くなれば叔母であるシェーズ夫人の遺産は他の甥姪に渡る可能性が高いことを父が懸念しています。また、叔母が彼に遺産を遺贈するよう特別な手続きを行った場合でも、遺留分の範囲内でしか他の相続人の権利を侵害できません。そのため、家族内での健康状態や相続人候補の動向が非常に重要視されたのです。

      具体的な補足が必要であればお知らせください!

      削除
  2. レイモンドたちの食卓の様子をもう少し説明してください。truiteはお魚ですね。

    返信削除
    返信
    1. はい、*truite* はフランス語で「マス」を指し、文中では「緑のソースを添えたマス料理(truite à la sauce verte)」が描写されています。この料理は典型的なフランスの冷菜であり、茹でたマスに、パセリ、ほうれん草、セルフィーユなどの香草を刻み込んだ冷たいソースを添えるものです。非常に爽やかでさっぱりとした味わいが特徴です。

      さて、食卓の様子ですが、これは旅行中の軽食、いわゆる急場の食事という状況を非常に生き生きと描写しています。以下に特徴を詳しく説明します。

      ### 1. **食卓の雰囲気**
      - レイモンドたちのグループ(彼女、母親のマダム・ド・ジョンキエール、マダム・デザーニュ、マダム・ヴォルマール)は、バラバラに席を確保する必要があるほど混雑したバッフェの一角で食事をしています。
      - 「急ごしらえの食事」や「大急ぎの中で」というフレーズから、落ち着いたフルコースの食事ではなく、せわしない中で済ませる雰囲気が伝わります。

      ### 2. **料理の描写**
      - 食事内容としては、「緑のソースをかけたマス」、「コートレット(骨付きの肉料理。特に子羊のカツレツやポークが多い)」、さらに「アーティチョーク」と続きます。
      - アーティチョークは西洋ではよく用いられる野菜で、茹でて葉を1枚ずつ剥きながらソースに浸して食べる形式が一般的。これはゆっくり楽しむというよりも軽くつまめるスタイルが向いています。

      ### 3. **楽しげな会話と人物の描写**
      - レイモンドは「冒険的な旅行の出来事」や「軽食を大急ぎで食べる非日常」を楽しんでおり、笑い声や冗談交じりの会話がその場を明るくしています。
      - マダム・デザーニュは非常に献身的な女性で、旅行中も自身の献身的役割(病人を世話すること)をこなしている一方、優雅で温かい人柄を感じさせます。彼女の「乳白色の肌」や「くぼみのある可愛らしい笑顔」はフランス貴婦人特有の繊細さを表しています。

      ### 4. **食卓の対比とその意図**
      - 他の部分では悲劇的な病気や混雑が描写されるのに対し、この場面はレイモンドたちの明るく活気ある様子が特に目立っています。
      - これにより、物語全体の陰鬱な基調に一瞬の「息抜き」と「希望」の象徴を加えています。

      フランスらしい色鮮やかな食文化と、旅行中ならではのざわざわした雰囲気が織り交ざるこの場面には、登場人物の性格や社会的背景も滲んでいます。

      削除

ルルド 第171回

   彼女が苦しんでいない時、つまり、医務室で働けるような体調の日には、ベルナデットは行ったり来たりし、子どものような陽気さで家じゅうを明るくしていた。亡くなるその日まで、彼女は無垢で子どもっぽい存在のままであり、笑うこと、跳ねること、遊ぶことが大好きだった。修道院の中では一番小...