2025年3月3日月曜日

ルルド 第62回

 

第五章

 夜の十一時頃、ゲルサン氏を《顕現のホテル》の自室に残し、ピエールは自分も休む前に 《ノートル=ダム・デ・ドゥルール病院》 に立ち寄ることを思い立った。彼はマリーを、絶望しきった、固く口を閉ざしたままの状態で置いてきたので、ひどく気がかりだったのだ。

 彼は サント=オノリーヌの間 の扉でジョンキエール夫人を呼び出したが、彼女の報告にますます不安を募らせた。マリーの様子は相変わらず悪く、相手が誰であれ 一言も発さず、食事すら拒んでいる という。

「ぜひ彼女のもとへ行ってください」とジョンキエール夫人は強く勧めた。

 女性病棟は夜間、男性の立ち入りが禁じられていたが、「司祭は例外」 だった。

「彼女が心を開くのはあなただけです。どうか彼女のそばに座って、話しかけてあげてください。ユダイン神父が午前一時ごろ、寝たきりの重病者たちに聖体拝領を授けに来ることになっていますので、そのときは補佐してください。」

 ピエールはジョンキエール夫人に従い、彼女に案内されてマリーのベッドサイドに腰を下ろした。

「可愛い子、あなたのことをとても大切に思っている方をお連れしたわ。」

 そう言いながら、夫人はマリーに優しく語りかけた。

「ねえ、話をして、少しでも落ち着きましょう?」

 だが、マリーはピエールを認めると、まるで 抑えきれない苦痛と憤りに満ちたような表情 で彼を見つめた。その顔は暗く、反抗心で強張っていた。

「ねえ、本を読んでもらうのはどう? 列車の中でしてくださったみたいに、心が落ち着くような美しいお話を読んでもらったら、少しは気が晴れるでしょう?」

 しかしマリーは反応しなかった。

「そうね、今はそんな気分じゃないのね。じゃあ、また後で…」

 そう言いながら、ジョンキエール夫人はピエールをマリーと二人きりにし、その場を離れた。

 ピエールは、静かに彼女に話しかけ、できる限り優しく、慰めとなるような言葉をかけた。

「こんなに絶望してしまっては駄目だ。もし初日に奇跡が起きなかったとしても、それは 聖母がもっと壮大な奇跡を準備しているから なんだよ…」

 だが、マリーは顔を背け、まるでピエールの声すら耳に入らないかのようだった。彼女の唇には苦々しい怒りが滲み、瞳は荒々しく光りながら虚空を見つめていた。

 ピエールはそれ以上話すことができず、静かに彼女を見守りながら、病室全体を見渡した。

 それは恐ろしい光景だった。これほどの憐れみと恐怖に、ピエールの心が吐き気を催すほど揺さぶられたことはなかった。夕食はとうに終わっていたが、厨房から運ばれた食事の残りがまだシーツの上に散乱していた。そして、明け方まで食事を取る者がいる一方で、他の者たちは呻き声をあげ、体を動かしてほしい、あるいは便器の上に乗せてほしいと懇願していた。夜が更けるにつれ、彼女たち全員を襲うかのように、ぼんやりとした譫妄の波が広がっていった。静かに眠る者はごくわずかであり、何人かは毛布の下で衣服を脱いでいたが、大半はそのままの姿でベッドに横たわっていた。巡礼の五日間の間、一度も下着を替えない者もいたほど、着替えは困難だった。

 薄闇の中で、病室の混雑はさらにひどくなったように見えた。壁際に並ぶ十五台のベッド、その間に敷かれた七つのマットレス、さらには新たに追加されたものまであり、まさに名前のつけようのない布切れの山が折り重なっていた。その中に、荷物や古びた籠、木箱、トランクが転がり込み、足の踏み場もない状態だった。煙を上げる二つのランタンが、死に瀕した人々のこの仮宿をかろうじて照らしていたが、それ以上に、何よりも耐え難いのは、病室を満たす悪臭だった。開け放たれた二つの窓からは、八月の夜の重い空気が流れ込むばかりで、少しも緩和されることはなかった。影が揺れ、悪夢にうなされる叫びが響き渡り、この夜の苦しみに満ちた地獄にさまよう魂たちを思わせた。

 そんな中、ピエールはレイモンドを見つけた。彼女は自分の持ち場を終えると、屋根裏部屋へ寝に行く前に、母親に別れのキスをしに来たのだった。一方、ジョンキエール夫人は、責任感の強い病院長として、三日間一睡もせずに過ごしていた。仮眠用の肘掛け椅子はあったが、そこに腰を下ろす暇すらなかった。座るや否や、誰かに呼ばれてしまうのだった。しかし、彼女は小柄なデザーニョ夫人に力強く支えられていた。この若い夫人は並外れた熱心さを見せ、ヒヤシンス修道女が微笑みながらこう言うほどだった。

「あなたはなぜ修道女にならないのですか?」

 それに対して、デザーニョ夫人は驚いたような表情で即座に答えた。

「そんなことできませんわ。私は結婚していますし、夫を心から愛していますもの!」

 ヴォルマール夫人の姿は見えなかった。ひどい偏頭痛に襲われて寝込んでしまったらしい。そのせいでデザーニョ夫人は少し皮肉交じりに言った。

「自分が病気になってしまうような人は、そもそも患者の世話をしに来るべきではありませんわ。」

 しかし彼女自身も、次第に腕や脚が痛み始めていたが、それを認めようとはしなかった。ちょっとした呻き声にも素早く反応し、手を貸す準備が常にできていた。パリの自宅では、燭台の位置を変えるにも召使いを呼ぶような彼女が、ここでは患者たちのために便器や洗面器を運び、溢れた汚水を捨て、病人の体を支え、ジョンキエール夫人が彼女たちの背中に枕を差し込むのを手伝っていた。しかし、十一時の鐘が鳴るころ、彼女はついに力尽きた。ほんの少しのつもりで肘掛け椅子に身を預けたのが致命的だった。そのまま、金色の美しい髪を肩に散らし、愛らしい顔を傾けたまま、完全に眠り込んでしまった。もはや、どんな呻き声も、どんな呼びかけも、彼女を目覚めさせることはなかった。

 静かに、ジョンキエール夫人が若い司祭に戻って言った。
「フェラン先生を呼びに行こうかとも思ったのですよ。ご存知のとおり、私たちに同行しているインターンの先生ですが、きっとこの娘さんを落ち着かせるお薬をくださるでしょう。でも、彼は今、下の婦人部屋でイジドール兄弟のそばにいて忙しいのです。それに、私たちはここで治療をするのではなく、大切な病人たちを聖母に託しに来ているのですからね。」

 そこへ、夜を通して婦人の世話をしていたヒヤシンス修道女が近づいてきた。
「婦人部屋にオレンジを持っていくとサバティエ氏に約束していたので、今しがた行ってきたところです。フェラン先生をお見かけしましたよ。彼はイジドール兄弟を蘇生させていました……お呼びしてきましょうか?」

 しかしピエールはそれを制した。
「いいえ、いいえ、マリーはきっと分かってくれるはずです。後で何か美しい文章を読んであげれば、落ち着いて眠れるでしょう。」

 マリーは依然として沈黙を守り、頑なに動かない。壁際には灯りが一つあり、その光の下でピエールは彼女の痩せた顔が微動だにしない様子をはっきりと見ていた。その右手の隣のベッドにはエリーズ・ルケがおり、スカーフを外したまま、怪物のような顔を天井に向けて深い眠りについていた。その醜い傷は、それでもなお、少しずつ色褪せてきている。そして、左手の隣にはマダム・ヴェトゥがいた。彼女は疲れ果て、死の宣告を受けながらも、絶え間ない悪寒に襲われ、まどろむことさえできない。ピエールは彼女に優しい言葉をかけた。

 彼女は感謝し、かすかな声で付け加えた。
「今日は何人かが奇跡の治癒を受けたそうですね。それを聞いてとても嬉しかったわ。」

 実際、グリヴォットは彼女のベッドの足元のマットレスに横たわっていたが、異様なほどの興奮に駆られ、何度も身を起こし、誰彼かまわずこう繰り返していた。
「治ったわ……私は治ったのよ……!」

 そして、何ヶ月も食事を受けつけなかった彼女が、今夜は鶏肉を半分も平らげたのだと語る。そして、夜の行列にも二時間以上、自分の足でついて歩いたのだと。もし聖母が舞踏会を開いていたら、朝まで踊り続けたに違いない。
「治ったのよ、本当に……すっかり治ったの!」

 その時、マダム・ヴェトゥはまるで幼子のように穏やかな表情で、心からの諦念をもって微笑みながら言った。
「聖母さまは、貧しい彼女を癒してくださって正しかったわね。それが私自身のことだったとしても、これほど嬉しくはなかったでしょう。だって私は時計屋の小さな店を持っているから、もう少し待てるもの……順番よ、みんな順番なんだから。」

2 件のコメント:

  1. 病院の中もまた混とんとしていますね。まず、衛生状態が悪い。そして、あるものは絶望し、あるものは治ったと歓喜している。カオスですね。

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    1. まさにカオスですね。病室の中で生死が入り交じり、一方では死を覚悟した人が静かに運命を受け入れ、もう一方では奇跡を信じて歓喜に震えている。しかも、その「奇跡」というものが、医学的には説明のつかないものではなく、もしかしたら一時的な興奮や暗示によるものかもしれないのが、何とも言えないリアリティを持っています。

      衛生状態の悪さも深刻です。エリーズ・ルケの「怪物のような顔」という表現からは、彼女が恐らく顔面の皮膚病にかかっていることがわかりますし、そんな中で修道女たちは淡々と「私たちは治療をしに来たのではなく、病人を聖母に託しに来たのです」と言う。医療と信仰が交錯するこの空間では、「救い」とは何なのか、その定義さえも揺らいでいるように感じられます。

      一方で、マダム・ヴェトゥのような人の言葉には、何とも言えない美しさがありますね。「私は小さな時計屋があるから、待てる」という諦観と、他者への思いやり。人間の極限状態における「順番」という発想が、かえって慈悲深くもあり、悲しくもあります。

      この混沌の中で、ピエールはどう感じているのでしょうね。彼はどこか冷静で、超然としていますが、彼自身の信仰と理性のバランスも、こうした現実にさらされることで揺らいでいくのかもしれません。

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ルルド 第178回

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