マリーは、これまでずっと幼子のような魂を持ち続けていた。
彼女の父が言うように、それは「白い魂」、最も純粋で、最も美しいものだった。13歳の時に病に倒れて以来、彼女の時間は止まったままだった。今日、23歳になっても、彼女はなお13歳の少女のまま。幼いまま、内に閉じこもり、彼女を押し潰したこの悲劇だけを見つめ続けてきた。そのことは、彼女の虚ろな目にも、どこか遠くを見つめるような表情にも、いつも何かに取り憑かれたような、何かを考え続けているような顔つきにも表れていた。彼女の心は、他の何かを望むことさえできないほどに囚われていたのだ。
彼女の魂は、成長することなく止まったままの、まるで優等生の少女のようだった。目覚めかけたばかりの恋心が、頬に落とす熱いキスだけで満ち足りるような、そんな少女の魂。彼女が知る唯一の「恋物語」は、涙にくれながらピエールに告げた別れのキスだった。それだけが、十年間、彼女の心を満たしていたのだ。
彼女は決して恋愛小説を読むことはなかった。許されたのは、信仰の書物だけ。それらは彼女を、人間を超越した愛の熱狂へと導いていった。
外の世界の喧騒は、彼女の閉ざされた部屋の扉の前で消え去っていた。かつて、湯治のためにフランス中を巡った時も、彼女はまるで夢遊病者のように、人々の間をすり抜け、何も見ず、何も聞かず、ただひたすらに自らの病の呪縛を思い続けていた。
それゆえに、彼女は純粋であり続けた。子供のようなあどけなさを持ったまま、悲しみによって成長を止めた少女のままでいた。病によって体は大人へと変わっても、心は13歳のまま、彼女が知る唯一の恋、13歳のあの頃の恋に、未だにとらわれていたのだ。
暗闇の中で、マリーの手が、ピエールの手を探し求めた。
そして、その手が彼女を迎えに来てくれた時、彼女はその手を強く、しっかりと握りしめた。
なんという喜び!
今、この瞬間ほど、純粋で、完璧な喜びを味わったことはなかった。二人は、世界から隔絶されて、ただ二人きり。暗闇と神秘に包まれたこの夜の魔法の中で、互いの存在だけがすべてだった。
彼らを取り巻くのは、ただ星々の輪舞。遠くから聞こえる歌声は、まるで心を宙へと舞い上がらせるような心地よい眩暈だった。
マリーは確信していた。
明日、彼女は癒される。
この夜を、奇跡の洞窟の前で過ごせば、彼女の願いは聖母マリアに届く。
必ず聖母は彼女の祈りを聞き入れてくださる——
彼女が一人、ひたすらに嘆願しさえすれば。
そして、彼女はピエールの気持ちも理解していた。
彼が「自分も今夜、一晩中、洞窟の前で過ごす」と言った時の意味——
それは、彼もまた、最後の望みをかけていたのだ。失われた信仰を取り戻そうと、幼子のように膝を折り、全能の聖母にすがりつこうとしているのだと。
今、この瞬間、彼らの手は固く結ばれていた。言葉は要らなかった。彼らは互いに祈ることを誓い合い、互いを忘れ、互いの中に溶け込んでいった。
彼らの願いはただ一つ——
「癒されたい」「幸せになりたい」
そしてその想いは、自己を捧げ尽くす愛の極みへと達し、つかの間、彼らは神々しい喜びの中に身を沈めたのだった。
—ああ! ピエールはかすかな声でつぶやいた。「この青い夜、影の無限……人も物も醜さを消されてしまう、この静寂の広がり……こんな夜のなかでなら、僕は疑念を眠らせることができるかもしれない……」
彼の声は次第に消えていった。すると今度はマリーが、同じように低い声で言った。
— それに薔薇の香り……この薔薇の香りを……感じませんか、ピエール? どこにあるのかしら、あなたには見えなかったの?
— ああ、確かに香りは感じる……でも、薔薇はどこにも咲いていないよ。もしあったなら、きっと僕の目にも入っていたはずだ。ちゃんと探してみたんだから。
— どうしてそんなことが言えるの? こんなにも空気が香りに満ちているのに、私たちはその中に浸っているのに……。ほら! 時々、この香りがあまりに強くなると、私は喜びのあまりくらくらしてしまう……きっと、薔薇はすぐ足元に、無数に咲いているのよ。
— いや、誓って言うけれど、どこにも薔薇はない。あるとすれば、それは目に見えない薔薇だということになる。僕たちが踏みしめている草そのものが薔薇なのかもしれないし、僕たちを囲む大木がそうなのかもしれない。あるいは、その香りが大地そのものから立ち上っているのかもしれない。あのすぐそばを流れる急流や、森や、山々の中から漂ってくるのかもしれない……。
彼らはしばらく黙った。そしてマリーが、先ほどと同じ低い声でつぶやいた。
— なんて素敵な香りなの、ピエール! 私たちが手を重ねているのが、まるで一束の花のように思えてくるわ……。
— ああ、本当に素晴らしい香りだ……。マリー、それはきっと君から立ち昇っているんだよ。まるで君の髪の中で薔薇が咲いているみたいだ……。
二人はそれ以上、言葉を交わさなかった。
巡礼の行列はまだ続いていた。聖堂の角を回るたびに、小さな火の輝きが暗闇の中から現れ、尽きることのない泉のようにあふれ出してくる。流れるように進む無数の小さな炎が、影の中に二重の光の帯を描いていた。だが、もっとも壮観なのは、ロザリオ広場においてであった。そこでは、行列の先頭がゆっくりと進みながら自らの周りを折り返し、どんどん狭まる円を描いていた。それは、執拗に回転し続ける渦のようであり、疲れ果てた巡礼者たちをさらに陶酔へと追いやり、彼らの聖歌をますます熱狂させていた。
やがて、円環はひとつの燃え上がる塊と化し、巨大な星雲の核のようになった。その周囲には、まるで終わりのない炎の帯が巻きついていた。その核は次第に広がり、やがて燃え盛る池となり、それがさらに大きな湖へと変わった。ロザリオ広場全体が、無数のきらめく波をたたえる火の海となり、終わることのない渦の中で目を回していた。
聖堂の白い石壁は、炎の輝きを受けて夜明けのように仄かに明るんでいた。だが、そのほかの地平線は、なおも深い闇に沈んでいた。暗がりの中では、道を外れた数本のろうそくが、まるで小さなランタンを頼りに道を探す蛍のように、彷徨っているのが見えた。
しかし、カルヴァリオの丘の上にも、行列の一部が登っているのかもしれなかった。なぜなら、高い空の中をゆっくりと移動する星々が見えたからだ。そして最後に、行列の最後尾が姿を現し、芝生を巡り、ゆっくりと炎の海の中へと溶け込んでいった。
3万本のろうそくが燃えていた。尽きることなく渦巻きながら、その赤々とした光をあおり続けていた。その上には、穏やかに広がる夜空があり、星々は次第にその光を失っていった。聖歌は止むことなく響き続け、光の雲となって天へと昇っていった。そして、「アヴェ、アヴェ、アヴェ、マリア!」という巡礼者たちの絶え間ない歌声が、まるでこの燃え上がる心々の爆ぜる音のように響いていた。彼らは炎と化し、祈りの中で燃え尽きようとしていた——その身を癒やし、その魂を救うために。
やがて、ろうそくの炎が次々と消えていき、夜が再び完全に支配するようになった。暗く、しかし優しく包み込む夜の中で、ピエールとマリーは自分たちがまだそこにいることに気がついた。木々の影に隠れ、手をつないだまま……。
遠く、ルルドの闇に沈んだ街路では、道に迷った巡礼者たちが宿への帰り道を尋ねていた。影の中を、何かがさまよい、何かが眠りにつこうとしていた。祭りの夜が終わるときにだけ現れる、ささやかな気配……。
しかし、彼らは忘れ去られたように、そこにとどまり続けていた。二人とも動かず、まるで時間さえも止まったかのように……。そして、目に見えぬ薔薇の香りの中で、彼らはこの上なく幸せだった。
これで第3章はおしまいです。
返信削除目には見えないけれども香ってくるバラの香り。何なのでしょうね。ピエールが言うように本当にマリーから立ち昇ってくるものなのか、興味を引きますね。単にロマンチックな演出とは思えないですね、ゾラの場合。
第3章、完了ですね!
削除確かに、ゾラの場合、単なるロマンチックな演出というよりは、何かしらの象徴的な意味が込められているはずです。見えないのに香る薔薇——これは、一体何を示しているのでしょう?
ピエールは目に見える現実にこだわり、「探したけれど薔薇はなかった」と断言します。しかし、マリーは「そんなはずはない、こんなに香るのだから」と確信している。この対比が面白いですね。**目に見えるものしか信じない理性**と、**感じることを信じる直感**の対立のようにも読めます。
そしてピエールが最後に言う「君の髪の中で薔薇が咲いているみたいだ」という言葉。もしこれが比喩ではなく本当に彼がそう感じたのだとしたら、**薔薇の香りはマリーそのもの、あるいは彼女の存在から発せられる何か**ということになります。
となると、この香りは「聖性」の象徴なのかもしれません。マリーはすでに半ば奇跡を信じ、ルルドの「神秘」の中に深く入り込んでいます。彼女が感じる薔薇の香りは、奇跡の予兆、あるいはすでに超自然的な次元に触れている証なのでは?
また、巡礼者たちが熱狂のうちに祈り、信仰の炎に包まれている場面と重ねると、**信仰の世界では「見えないもの」が「実在」するのだ**ということを示唆しているのかもしれません。科学と宗教、理性と感覚——これらのテーマがゾラの手によって繊細に織り込まれている感じがしますね。