突然、ピエールは目を奪われた。彼は左側の廊下を辿り、スロープの上、日光の中に出たのだった。そしてすぐに、優しい腕が彼を捕まえ、包み込んだ。
それは、彼が約束をすっかり忘れていたシャセーニュ老人医師だった。
彼はそこでピエールを待ち、ベルナデットの部屋やペイラマル神父の教会を案内しようとしていたのだ。
「――おお、わが子よ、なんという歓びがおまえを満たしていることだろう!」
「私はたった今、あの大いなる知らせを耳にしたところだ。ルルドの聖母が君の友人に授けたあの驚くべき恩寵を!」
「おぼえているかい、私が一昨日君に言ったことを! もう私は心配していない、君自身も救われたのだ。」
神父は、とても蒼白だった。
最後の苦い思いが胸をかすめた。
しかし彼は微笑むことができた。
そして穏やかに答えた。
「――ええ、私たちは救われました。本当に幸福です。」
――それは、始まりだった。
他者に与えるための、慈愛からくる**「神聖な幻想」。ピエールが周囲に語り始める、「救われた」という嘘の、最初の一言だった。
そして、ピエールの目にはさらにもう一つの光景が映った。
バジリカ(大聖堂)の大扉が、両開きに大きく開いていた。赤い太陽の光が、堂内を一筋に貫き、聖堂の端から端まで赤く染め上げていた。
すべてが、炎の豪奢の中で燃えていた。
黄金の柵。
金銀の奉納品(エクス・ヴォト)。
宝石をちりばめたランプ。
光の刺繍がほどこされた旗。
宙を揺れ動く香炉――まるで飛び交う宝石のように。
その奥、燃えるような輝きのただ中に。白い祭服と金色の祭服のあいだに。彼はマリーを見つけた。
マリーは髪をほどき、金色の髪の流れが、金のマントのように彼女の体を覆っていた。
そしてオルガンが王者の賛歌を鳴り響かせる。群衆は熱狂し、神を称える歓喜の声をあげる。
そのときユダイン神父が、祭壇の上に聖体を掲げた。もう一度――とても大きく、とても高く、まるで光り輝く栄光そのもののように。
聖堂を満たす黄金の奔流の中で、聖体が掲げられる。
そのとき、すべての鐘が一斉に鳴り響き、バジリカは、この驚くべき勝利を高らかに告げるのだった。
この「黄金にあふれた祝祭」の描写、
返信削除その華やかさの中に、ピエールの孤独と「嘘」と「自己犠牲」が静かに沈んでいるのが切ないですね。
そして、マリーの姿が**「聖母のように」**黄金のマントに包まれているという視覚的比喩――
ピエールにとって、マリーが「自分の愛する人」から「神に捧げられた存在」に昇華されていく瞬間でもあります。
ここで「救い」は成就するけれど、
ピエールは自分一人が取り残された者であることを痛感する。
…このラストの美しさ、悲しさ、圧倒的ですね。
これで第四章、完了です!
おめでとうございます🎉✨
また一緒に続きを読めたら嬉しいです。
きらびやかなこの章の終わり方は、続く大どんでん返しのための演出かもしれませんね。
返信削除さてさて、どうなることでしょうね。
おお、鋭い!まさにその通り、ですね。
削除この「きらびやかで、荘厳で、圧倒的に美しい」第四章の終わり方――
それ自体が、ある意味「信仰のクライマックス」、奇跡と歓喜の頂点のように描かれている。
でもだからこそ、その先には 「登りつめた山の頂の向こうにある谷」 を読者は無意識に期待してしまう。
あれほどの光があったなら、その影はどれほど深いのか、と。
ゾラはこの章で、
「民衆の信仰のエネルギー」と「宗教儀式のスペクタクル」と「個人の孤独な葛藤」を一気に照らし出して、
あまりにまばゆい光で包んで終わらせている。
だから次に来るのは――
「この光はほんとうの光だったのか?」
「この救いはほんとうの救いだったのか?」
という問いの予感なんですよね。
そしてあなたが書いてくださったように、
ピエールの板挟み、エゴの自覚、そして自分の「嘘」に気づきながらも笑わなければならないその痛みが、
ここでいったん「金色のカーテン」で包まれ、観客に見えないようにされる…
でも、幕はもうすぐ引かれる。
そのとき、彼の心の底が、マリーの真実が、
バジリカの「金」では覆いきれないものとして現れる――
そんな予兆のように思えます。
…いやあ、次章がますます楽しみですね!
ピエールの心の旅、マリーの「奇跡」の行方、
ゾラがこの物語にどんな決着を用意しているのか。
いっしょにまた読み進めましょう!
続き、準備ができたらぜひお知らせください✨