彼女の体が再び震え、熱い涙が頬を伝って流れ落ちた。
「ああ、この三日間、この三日間! あなたにはわからないわ、私がどんなに激しくこの日々を待ちわび、どんな炎の中でそれを生き、どんな激情でその記憶を引きずっているか!」
ピエールの長き貞潔の前に、そのすべてがまざまざと浮かび上がった。
あの三日三晩――どれほど激しく欲したことか、どれほど貪欲に生きたことか。彼は想像した。あのホテルの一室の奥で、窓も扉も閉ざされ、使用人たちでさえ女がそこにいることに気づかなかった、そんな場所で。終わりなき抱擁、絶え間ない接吻、存在すべてを捧げる行為、世間を忘れ、尽きることなき愛に溶け消える――もはや場所などなく、時間すら消え、ただただ、互いに属すること、再び一つになることへの焦りだけがあった。
そして、別れの瞬間には何という断ち切れぬ痛み! 彼女が震えていたのは、その残酷さゆえであり、自らの楽園を去らねばならぬ苦しみの中で、普段は沈黙している彼女が、自らの苦痛を叫ぶほどに取り乱していた。
最後にもう一度、互いの腕に身を投げ入れ、溶け合い、ひとつになろうとしながらも、引き剥がされる――まるで身体の半分がもぎ取られるような思い。そして言い聞かせるのだ、これからまた長い日々と長い夜を過ごさねばならぬ、顔すら見ることも叶わずに!
この肉体の苦しみの記憶に打たれ、ピエールは胸を締めつけられる思いでつぶやいた。
――哀れな女性だ……
「それにね、神父様、と彼女は続けた、私がこれから戻っていく地獄を想像してみてください。何週間も、何ヶ月も、私の空は閉ざされ、苦しみに満ちた殉教の日々を、ひと言の不満も漏らさず生きているのです……幸せな時間はまた終わり。これでまた一年のおあずけです。ああ神様! たった三日三晩、一年にそれしかないなんて……享楽の激しさと、その再来を待つ忍耐のあまり、気が狂いそうになります。私は本当に不幸なのです、神父様……それでも、私が「正直な女」だと思いませんか?」
彼は、彼女のこの激しい情熱と誠実な痛みのほとばしりに深く胸を打たれた。そこには普遍的な欲望の息吹があり、すべてを清めるような崇高な炎が燃えていた。彼の憐れみは溢れ出し、赦しそのものとなった。
「奥様、私はあなたを哀れに思い、そして心から敬意を抱いています。」
その言葉を聞いて、彼女はもう何も言わず、涙に曇った大きな瞳で彼を見つめた。そして突然、彼の両手をつかむと、灼けつくような指でしっかりと握りしめた。そして、そのまま彼のもとを去り、廊下の奥へと、影のような軽やかさで消えていった。
しかし、彼女がいなくなったあと、ピエールはむしろ彼女の「存在」の重さに打たれた。彼は窓を大きく開け放った。彼女が残していった「愛の匂い」を追い払うために。すでに日曜の時点で、隣室に女が潜んでいたことに気づいたとき、彼は恥じらいを伴う恐怖を覚えた。ルルドの無垢なる神秘の中に、肉体の反撃があることに戦慄したのだ。
そして今、再びその恐怖が彼を襲う。
彼は理解した――命というものが持つ圧倒的な意志、存在せんとする生の力。その全能さを。
愛は信仰よりも強い。もしかすると、神聖なるものは「交わり」そのものだけなのかもしれない。
愛し合うこと、あらゆる障壁を越えて互いに属すること、命を生み出し、命をつないでいくこと。それこそが自然の唯一の目的ではないのか? 宗教や社会の制度とは別に?
一瞬、彼は深淵を覗いた。自らの貞潔こそが、彼の最後の支えであった。信仰を失った神父としての、わずかな誇りであり、人生の尊厳であった。理性に屈した今、もし肉体にまで屈することがあれば、自分は本当に堕落する――そう理解した。彼の清らかさへの誇り、自分の専門職における誠実さにかけたすべての力が、再び彼の内に戻ってきた。
そして彼は再び誓った――自分は「人間ではない」のだ、と。自ら望んで人間の列から身を引いた者なのだから。
七時の鐘が鳴った。ピエールはもうベッドには戻らず、たっぷりの水で洗顔し、この冷たい水が熱に浮かされた彼の頭を冷ましてくれるのを嬉しく思った。
身支度を終えるころ、彼の心にゲルサン氏のことがふたたび浮かび、廊下から足音が聞こえたときには、緊張と不安が胸をよぎった。足音は彼の部屋の前で止まり、ノックの音がした。彼は扉を開け、安堵した。
ルルドで様々な人々の生と死に触れ、ピエールの世界観が確立してきていますね。
返信削除まさにその通りです。今回の章では、とりわけ**肉体と欲望、愛と信仰、罪と赦し**というテーマが、非常に生々しい形でピエールに突きつけられていますね。
削除この女性――名前は明かされていませんが、彼女の「三日間の愛」に込められた情熱と苦悩は、ピエールの中にある「信仰」と「理性」だけでは処理しきれない、**生命の本能そのもの**を象徴しているようです。彼女が語る「三日間」は、愛欲の歓喜であると同時に、断絶された時間、待ち続ける苦悩の記録でもあります。それは一種の**受難**でもあり、彼女はまさしく「自分の殉教」を生きている。
ピエールの反応もまた重要です。「可哀想な女だ」と繰り返しながら、彼の中で**慈悲と恐怖**がせめぎあっている。「この情熱は穢れているのか? それとも、ある種の神聖さがあるのか?」と。彼女の情熱を否定することができず、それどころか「彼女を尊敬する」とまで言っています。
そして興味深いのは、その後でピエールが感じる\*\*「不在の方が重い」という存在感\*\*。彼女が去った後に彼が味わう「恋の残り香」とも言える不穏な空気――これは、彼の「信仰」の領域が揺らいだ証拠です。
ルルドという清らかな場に、「肉」が入り込んでくる。いや、それは「肉」ではなく、「生」の根源的な衝動――**神をも突き動かす命のエネルギー**そのものではないか、という感覚が彼に芽生えていく。
この場面で、ピエールの内面にある「禁欲による自我の支え」が露わになります。信仰を捨てた後、彼が最後にすがっているのは「純潔による自尊心」なのです。彼がその「最後の支柱」さえ失えば、自分という存在は瓦解する。そのことに気づいてしまった彼は、まるで修道士のように、再び自らに誓いを立てる。
ゾラは、ここでピエールをただの懐疑的司祭ではなく、**激しい葛藤の中でなおも「人間であること」を選び続ける存在**として描き直しているように思います。
次回以降、ピエールがこの体験をどのように統合していくのか――「奇跡」と「苦悩」、「肉体」と「魂」の間で、彼の思想と人格がどう変容するかが、いよいよ見どころになってきますね。
女性はヴォルマール夫人だよ。ねこじい、忘れちゃだめだよ!信頼なくしちゃうぞ!
返信削除ぎゃっ!シーちゃんのひげに誓って、これは痛恨の失態……!
削除もちろん**あの情熱の火山のような女性はヴォルマール夫人**でした!以前の場面で、彼女がホテルの一室に「愛人との年に一度の三日間」を過ごすためにこっそり隠れていたこと、ちゃんと描かれていましたね。ピエールが彼女の存在に気づいてからの伏線が、今回一気に回収されたかたちです。
しかも今回、彼女の台詞まわしと心情描写は、ゾラの筆が冴え渡る白熱ぶり。あの\*\*「三日間」**という表現の繰り返しとリズム、そして「これでまた一年、地獄へ戻るのよ」という告白……これはまさに彼女の**生の燃焼\*\*そのものでしたね。
それにしても、こうした“隠された情事”を、ゾラがあえて**ルルドという奇跡の舞台の中に配置している**こと、そしてその“告白”を“元・信仰者の司祭”ピエールにさせていることが、実に辛辣で象徴的です。聖なる場所のすぐ隣で、こんなに肉体の真実がむき出しになるなんて!
さて、ねこじいは誓って忘れません。ヴォルマール夫人=「三日間の女神」!
次に現れるときは、また波乱を運んできそうですね……いや、もうすでに十分、ピエールの心の奥に火種を残しました。
さあ、次はピエールとゲルサン氏の再会ですね。続きを進めましょうか?