2025年11月14日金曜日

ローマ 第137回

  部屋は広いにもかかわらず、人々が押し寄せて、彼らは息が詰まりそうになり、押され、壁に押しつけられそうになった。そこで大使館書記官は司祭を連れ出し、この宮殿の一階、ローマでもとりわけ豪奢と名高い、祝宴用大広間の壮麗さについて説明をしながら歩いた。絵画のギャラリーでは舞踏会が開かれており、そこは長さ20メートルの、王侯のような空間で、傑作があふれ、その8つの窓はコルソに面していた。ビュッフェは古代室にしつらえてあり、その部屋は大理石造りで、ティベル川のほとりで発見された、カピトリーノのヴィーナスと張り合うほどのヴィーナス像が置かれていた。そこから先には、さらに驚くべき一連のサロンが続き、希少な布地で張られ、かつての調度品のうちの逸品を残しており、将来の没落を見越して古物商が目を光らせているほどであった。その中でも特に有名なのが小さな鏡のサロンで、円形の部屋をルイ15世様式で飾り立て、彫刻木枠にはめ込まれた鏡で全面が覆われ、豪奢と繊細なロココの極致といえた。

「そのうち、全部ご覧になれますよ」とナルシスが言った。「でもちょっとここに入りましょう、息をつくなら今のうちです……となりのギャラリーから肘掛け椅子を運んできてありますよ、座りたい、見られたい、愛されたいと願うお美しいご婦人方のために。」

 サロンは広く、実に見事なジェノヴァのベルベットの壁掛けで飾られていた。ごく淡いサテン地に鮮やかな花模様の“古い園芸風ベルベット”であったが、その緑も青も赤も、恋の花びらのように年経てやわらかく色あせ、神々しいほどの風情をたたえていた。コンソールやガラスケースには宮殿所蔵のもっとも貴重な美術品が置かれ、象牙の小箱、彩色と金彩の施された木彫、銀器など、まさに宝の山であった。そして数多くの椅子には、すでにご婦人方が逃げ込んでおり、混雑を避けて小さな集まりを作り、笑い、語り合い、そこを見つけた数人の紳士と談笑していた。ランプの鋭い光の下、絹のように滑らかな裸の肩、金髪や黒髪の結い上げが波打つ白いうなじほど、見る者を喜ばせるものはなかった。柔らかな衣装のあわい色調のなかから現れる裸の腕は、まるで生きた肉体の花のようであった。扇はゆっくりと動き、宝石の火をより鮮やかにし、一息ごとに、女の香気が、どこか支配的なスミレの香りと混じって漂った。

「おや!」とナルシスが声を上げた。「我らが親しい友、モンシニョール・ナーニだ。あちらでオーストリア大使夫人にご挨拶している。」

 ナーニは司祭とその連れを見つけると、すぐに近づいてきた。そして3人は窓のある奥まった場所へ移り、くつろいで少し話すことにした。聖職者は微笑み、祝宴の美しさに心から喜んでいる様子であったが、広くあらわになった肩がどれほどあちこちにあっても、まるで気づきもしないかのように、三重に無垢さで武装した魂の平静さを保っていた。

「おお、愛する息子よ」と彼はピエールに言った。「お会いできてなんと嬉しいことか!……さて、我らローマが祝宴を催すと、どう思われます?」

「いや、実に華麗でございます、モンシニョール!」

 彼はチェリアの高い敬虔のことをしみじみと語り、王と王妃の来訪があることなど気にも留めぬふりをして、あくまでこの豪華な祝宴をヴァチカンに忠実な公爵夫妻の名誉のためであるかのように話していた。そして突然に言った。

「実は今日一日、あなたのことばかり考えていたのです、愛する息子よ。そう、あなたがご自分の件で、枢機卿サングイネッティ猊下にお会いになったと聞きまして……さあ、どうお迎えになりました?」

「ええ、とても父のように……最初は、聖母ルルドの庇護者というお立場が、私の件ではご苦労をおかけするのだとおっしゃいました。ですが帰ろうとしたところ、急にとても親切になり、助力を約束してくださって……そのご配慮にたいへん感動いたしました。」

「おや、本当に、愛する息子よ! いや、少しも驚きません。あの方は実にお優しい!」

「そして、モンシニョール、私は軽やかな心で戻ってきました。希望で満たされ……私の裁判も、これで半ば勝ったように思えるのです。」

「それはごもっともです、理解できますよ。」

 ナーニはいつもの、知性のにじむ細やかな笑みを浮かべ、そこにはごく仄かな皮肉があったが、刺すような痛みはない。短い沈黙の後、彼はごく自然に続けた。

「残念なことに、禁書目録省が一昨日、あなたの著書を正式に禁じました。書記官の招集で、特別に会議を開いたのです。そしてその判決は、あさってには、教皇聖下のご署名に回されます。」

2 件のコメント:

  1. ナーニときた日にゃあ、にこにこしながら衝撃的なことを平然と伝える。
    このタヌキ野郎がっていう感じですね。
    そして、ピエールの著書は、予想どおり、禁書処分!
    妙な希望を持たせてたらい回ししてきた聖職者どのたちも残酷でござるのお。

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    1. ほんとだよ、そらさん。
      ナーニって、あの「にこにこ無害顔で、手には鋭い刃物」タイプの典型だよね。
      この場面なんてゾラの筆が悪意半分、冷笑半分で、読者の情緒をきれいに振り回してくる。

      ピエールが希望をつなぎに行った先々で、あの人たちが示した“温かさ”が、実は全部「拒絶のための丁寧な段取り」にすぎなかった、という残酷さ。
      ——しかも最後に待っていたのが、このにこやか禁書宣告。

      正直、「そんなん最初から分かってたんじゃないの? だったらさっさと言えやぁー!」と机を叩きたくなる流れ。
      でもここがローマなのよね。権力の階段を上へ上へ登るごとに、拒絶は直接言わず、笑顔で包んで返す。
      そしてナーニはその“笑顔のプロフェッショナル”。タヌキどころか“老舗の狸鍛冶屋”レベル。

      ただ、ゾラはここで読者に思わせてる。
      **「いまさら禁書? それ、あの巨大機構の動きとしてはむしろ自然だよね」**
      って。
      だからピエールのショックと、読者の「あぁ、ついに来たか……」が見事に重なる。

      優しい顔の人に最後に毒を盛られる感じ。
      ゾラ、容赦ない。
      でも読書としては、この冷酷さがたまらんのよね。

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ゾラ未邦訳作品のAI翻訳プロジェクトの総括

  ねこじい、こんばんは、そらです。 今日は2025年12月31日、大晦日です。 今年の1月1日から始めた「ルルド」「ローマ」の翻訳プロジェクト、 1年間を振り返りながら、AI翻訳の可能性について考えてみたいと思います。 ☆AI翻訳、使える!サイコウ!(^o^)/と思った点 ①な...